内容説明
小学校の卒業記念に埋めたタイムカプセルを開封するために、26年ぶりに母校で再会した同級生たち。夢と希望に満ちていたあのころ、未来が未来として輝いていたあの時代―しかし、大人になった彼らにとって、夢はしょせん夢に終わり、厳しい現実が立ちはだかる。人生の黄昏に生きる彼らの幸せへの問いかけとは。
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
1963年、岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経てフリーライターに。91年「ビフォア・ラン」で作家デビュー。99年「ナイフ」で第14回坪田譲治文学賞、「エイジ」で第12回山本周五郎賞受賞。2001年「ビタミンF」で第124回直木賞受賞。「疾走」「流星ワゴン」「送り火」「卒業」「いとしのヒナゴン」「その日のまえに」など著書多数。ルポルタージュ、時評、評論など小説以外のジャンルでの執筆活動も高い評価を受けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちょこまーぶる
117
読み進めるにしたがって心を鷲掴みされた一冊でした。子ども時代の人間関係、夫婦関係、親子関係、大人になってからの友人関係など人生の様々な人間関係の微妙な難しさがヒシヒシと伝わってきて、読む事が辛くなる場面もあったが、でも「人生ってそういうものだよな」と納得しながら読んでいました。一時期流行ったタイムカプセルを開封する儀式から始まる話ですが、タイムカプセルが未来の夢と現実を突きつける、ある意味残酷な存在なんだろうという事は以前から思っていたので、この本では実証されたようにも思えましたね。でも、良い本でした。2016/01/16
bunmei
112
表紙の太陽の塔が、大阪万博のシンボルゾーンの中心にそびえ立っていたのが小学校5年生の時。「人類の進歩と調和」に向けた輝かしい未来がそこにはあった。私もその次の年に、小学校を卒業するに当たり20歳の自分に綴られた手紙をタイムカプセルとしてに埋めた。あれから40年、20歳の時に掘り起こした手紙は、誤字もあるけど、無邪気に夢や希望を綴っていたことを、懐かしく思い出した。ほとんどの人が、自分が思い描いていた未来とは違う現実の中で、自分にとっての幸せとは何かを、それぞれに折り合いをつけて生活しているのだろうと思う。2019/10/11
優希
81
小学校の記念に埋めたタイムカプセルを開封するために集まった同級生。かつては輝いて見えたものも、大人になると厳しい現実になってしまうのですね。夢は夢で終わるのか。幸せとは何なのか。色々考えてしまいました。2019/10/11
kotetsupatapata
76
星★★★★☆ タイムカプセルに小学生の頃思い描いていた20年後 街の様子も、自身を取り巻く状況も家庭内不和やリストラに病気と、輝かしいはずだった未来と大きくかけ離れて残酷なまでの現実を突きつけられる克也をはじめとする登場人物達。 等身大の彼等の抱えている問題は、そのまま自分自身に投影され、読んでいて苦しくなる場面もしばしば。 決してハッピーエンドとは言えないけど、それぞれが落とし所を見つけて明日へ向かって歩いていく彼等 2021年の今、還暦近くの彼等に「幸せですか?」と聞いてみたいですね✨ 2021/06/29
紫 綺
74
しばらく遠ざかっていた重松作品。小6の時埋めたタイムカプセルを開けるイベントのため、26年ぶりに再会した同級生達。太陽の塔を象徴するように、過去現在未来を辛辣に描く長編。人生なかなか思い通りにはならないものだ。2021/12/11