内容説明
関ケ原決戦―徳川方についた伊右衛門は、この華々しい戦でも前線へ投入されたわけではない。勝ち負けさえわからぬほど遠くにあって銃声と馬蹄の轟きを聞いていた。しかし、戦後の行賞ではなんと土佐二十四万石が…。そこには長曽我部の旧臣たちの烈しい抵抗が燃えさかっていた。戦国痛快物語完結篇。
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
大正12(1923)年、大阪市に生れる。大阪外国語学校蒙古語科卒業。昭和35年、「梟の城」で第42回直木賞受賞。41年、「竜馬がゆく」「国盗り物語」で菊池寛賞受賞。47年、「世に棲む日日」を中心にした作家活動で吉川英治文学賞受賞。51年、日本芸術院恩賜賞受賞。56年、日本芸術院会員。57年、「ひとびとの跫音」で読売文学賞受賞。58年、「歴史小説の革新」についての功績で朝日賞受賞。59年、「街道をゆく“南蛮のみち1”」で日本文学大賞受賞。62年、「ロシアについて」で読売文学賞受賞。63年、「韃靼疾風録」で大仏次郎賞受賞。平成3年、文化功労者。平成5年、文化勲章受章。平成8(1996)年没
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
269
信長、秀吉、家康につかえ、やがて土佐藩藩祖となる山内一豊サクセスストーリー最終巻。いやもはや主役は妻千代であり、平凡な夫を育成しながら出世させてゆく、陽気で痛快な、美しき千代が操る『マリオネットストーリー』 天下分け目の関ヶ原、さすがに戦場では千代に頼ることはできないが、重要な決断の際には過去の千代の言葉がよぎる!司馬作品で女性が主人公なのも珍しいが、特に千代の話す言葉や浮かべる思いの表現が抜群で、誰もが惚れ抜くのもわかる!類い稀なる作者の好奇心が紡ぐ戦国夫婦物語の大団円!読みやすく相当面白いです‼️🙇2019/01/26
つーこ
111
山内一豊の最大トピックである小山会議。めずらしく千代の意見は聞かずに臨んだが、そこはさすが一豊。堀尾忠氏のアイデアを拝借し土佐24万石を得る。ここまでは凡庸な一豊にも好意を持っていたが、土佐に移ってからの彼は人が変わったようで物悲しかった。千代の悲しみはいかばかりか。女性は城とか国とか出世とか、そんなもの興味はない。ただただ家族が幸せであればと願っているのだ。そしてそんな歪んだ鎮圧のせいで(?)幕末までの頑なな身分制度に苦しむ土佐藩が出来上がる。ここで、千代の意見に耳を貸していればと思わずにいられない。2019/10/09
サンダーバード@怪しいグルメ探検隊・隊鳥
106
いよいよ関ヶ原の合戦。小山評定での一豊の言動が徳川方の流れを大きく変える。合戦でさしたる戦果も無いのに土佐一国を与えられるほどの貢献度であったのだろう。実直だが凡庸とされた一豊であるが、思う事とその場で腹をくくれることは大きな違い。やはり一国の大名になるべくしてなったのだと思う。凡庸な一豊を影で支える賢妻千代、このイメージは従来からの定説だったのか、それとも司馬がこの作品で作りあげたのか?キャラ設定としてはわかりやすいが、後者であれば、後に18代当主が作品に対して苦言を呈したというのも納得できる。★★★2017/12/14
優希
88
ついに関ヶ原の戦いへと物語は進みます。一豊は徳川方につきますが、華々しい活躍をしたわけでもなく、勝ち負けすら不明の遠きところで様子を見聞きしていたに過ぎないのでしょう。とはいえ、土佐の大名となったことが戦国時代を象徴しているのかもしれません。千代が妻でなかったら、違う運命が待っていた気もするので、一豊の成していたことには影に千代がいたような思いがぬぐえません。2018/12/17
やっちゃん
81
小山評議はもちろん、関ケ原の後に一緒に風呂に入るシーンが良い。ここで完。でも良かったかも。最終章で伊右衛門は残念すぎる。あくまで千代のタッグパートナーとしてはじめて生きるテリーマンのような男だ。ただなんでも完璧な主人公より人間味があって良かった。 2022/10/17