内容説明
2007年の春までに、北半球から四分の一のハチが消えた。巣箱に残されたのは女王蜂と蜂蜜のみ。その謎の集団死はやがて農業に大打撃を与えていく。電磁波?ウイルス?農薬?科学者達の原因追及の果てに見えてきたものは?著者は単行本発行後の2009年来日。日本でも失踪したハチを取材。
目次
ハチが消えた
あなたのその朝食は
集団としての知性
何かがおかしい
犯人を追う
夢の農薬
おかされた巣箱を見る
人間の経済に組み込まれた
複合汚染
ロシアのミツバチは「復元力」をもつ
もし世界に花がなかったら?
実りなき秋
初霜
ハチはどこにいったのか
著者等紹介
ジェイコブセン,ローワン[ジェイコブセン,ローワン][Jacobsen,Rowan]
食物、環境、そして両者のつながりについて『ニューヨークタイムズ』紙、『ニューズウィーク』誌など、多数のメディアに寄稿する。The James Beard賞を受賞した『A Geography of Oysters』をはじめ、著書多数
中里京子[ナカザトキョウコ]
1955年東京生れ。不妊・生殖補助医療の国際学会の事務局担当
福岡伸一[フクオカシンイチ]
生物学者。1959年東京生れ。京都大学卒。青山学院大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
351
ある時突然養蜂が出来なくなるほど、蜂がいなくなって、その原因を追及するところがワクワクしたが、いろんな影響が絡み合ってるのだなと知った。巻末の福岡先生の話にある狂牛病とも似てるなぁと思った。2017/08/16
翔亀
53
原題「実りなき秋」、レイチェル・カーソン「沈黙の春」へのオマージュだ。春に鳥の囀りがなくなると同じように、秋に花は実を結ばなくなる近未来への警告の書。まさしく農薬など人造の化学物質を告発したカーソンの現代版だ。2006年に大問題となったミツバチの大量死の犯人を探るスリリングな展開の果てに解明される真相は何か。農薬は犯人の一人ではあるが、裏で操る真犯人が抉り出される。それは自然を管理・操作する現代文明。技術により対症療法を重ねますます悪化させ負のスパイラルに陥ってしまう現代の産業主義のあり方が問われるのだ。2016/05/21
トムトム
45
大切なことを端折って「こうすれば効率よくて簡単じゃん!」と言うアメリカ人。結果、回復できない程の壊滅状態になる。全然反省しないで、そんなことばかり繰り返している。そして、大切な事をちゃんと守って地道にやっている人を、仙人・悟り・禅などの言葉で褒めちぎる。日本人からすると、当たり前なことなんだけどね。いまだに得意げに「欧米では!」と連呼している日本人いるけど、彼らの真似をしてもしょうがない。動物愛護とか自然保護とか、大切な事を端折って簡略化して分かったつもりになっている人たち、好かん。でもこの本は面白い♪2021/02/24
kasim
38
ミツバチの大量消滅については数年前から報道などで少し知っていたが、まとめて読むと、ミステリーのような巧みな語り口とは裏腹に問題の深刻さに背筋が寒くなる。世界の食料の9割を占める100種の植物のうち7割がミツバチの受粉を必要としている。農薬やダニの問題もあるが、死んだミツバチの免疫機能も崩壊しているという。儲かる作物だけを植え、花の季節に合わせてミツバチをレンタルで世界中移動させる現代の農業を、コーラとドーナツだけで年中出張を続ける苛酷な状況の会社員に著者が例えているのは納得。2019/09/23
小木ハム
38
2007年春、北半球にいる蜂の4分の1が失踪した。ミステリ仕立てで蜂の行方と環境問題に迫っていく科学ノンフィクション。ウィットに富んだ翻訳で繰り手が止まらない。不自然な暮らしかたを強要されるコロニー在住者、ザクザク遺伝子を傷つけられているのに自覚症状はゼロ。ミツバチに人類の末路がダブって見える。人の欲望をどんどん叶えていくことは果たして″自然″な事だろうか?蜂さんごめんよ。こんなに貢献してくれてたなんて思いもしなかった。読後にはミツバチや生きものたちが愛しくなることうけあいです。蜂蜜の様に濃い良書。2018/01/20