内容説明
「この先、何が起ころうと、それはわっちが決めたこと、後悔はしませんのさ」―誤解とすれ違いを乗り越えて、伊三次と縒りを戻した深川芸者のお文。後添えにとの申し出を袖にされた材木商・伊勢屋忠兵衛の男の嫉妬が事件を招き、お文の家は炎上した。めぐりくる季節のなか、急展開の人気シリーズ第三弾。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
昭和24(1949)年北海道函館市生まれ。函館大谷女子短期大学卒業。函館在住。平成7年「幻の声」でオール読物新人賞を受賞、デビュー。『幻の声 髪結い伊三次捕物余話』及び、『紫紺のつばめ 髪結い伊三次捕物余話』『雷桜』『斬られ権佐』は直木賞候補となる。『深川恋物語』で吉川英治文学新人賞、『余寒の雪』で中山義秀文学賞受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶち
116
いやですねぇ、男の嫉妬。 それに引き替え、お文の潔いこと。「この先、何が起ころうと、それはわっちが決めたこと、後悔はしませんのさ」。深川芸者の心意気ですね。でも、そのお文が深川を出ていくことになるとは....伊三次も覚悟を決めるしかありません。 この巻、どのお話も心にずっしりと響くものばかり。読んだ後も余韻が長く残っています。新たな登場人物、掏摸の直次郎とお文の女中のおこな。二人ともだいぶ癖のある人物ですが、それが物語にある種の深みを与えてくれているようで、今後まますます楽しみとなりました。2021/02/28
ふじさん
101
シリーズ3作目。岡っ引きの増蔵と女巾着切りのお絹との因果な関係を巧みに描いた「因果堀」がなかなかいい。今回は、誤解とすれ違いを乗り越えて伊三次との縒りを戻したお文の人生の節目となる作品だ。お文の生みの親を失い、果ては住んでいた家は火付け原因で火事になり、慣れ親しんだ深川を離れることになる。まさに急展開の内容だ。又、マンネリを避けるためにと作者が取り込んだホラー紛いの思い切った逸話も入り、シリーズは快調だ。伊勢屋忠兵衛とお文の最後の丁々発止のやり取りは、まさに深川芸者のお文の独壇場だった。まさに拍手喝采。 2022/05/02
はにこ
98
今回も惹き付けられた。留蔵の過去にお文の出生の秘密という、登場人物を掘り下げたところや、おみつの嫁入りやおこなというアクの強いキャラクターの登場。伊勢屋の嫌がらせやファンタジーまで。玉手箱から面白いものがどんどん出てくる。でも詰め込みすぎは感じないバランス感。さらば深川の後のお文がどうするのかすごく楽しみ。2020/12/01
Shinji Hyodo
96
『おきゃあがれ!』ふざけんなべらぼうめ!的なフレーズでしょうか?私が学生時代の70年代前半頃のバイト先の主任さん(60代半ばの台東区産まれ)はよくこの言葉を使ってました。『さらば深川』今作も五編の連作短編でどれも連作ならではの話の繋がりがあるし、伊三次とお文の仲の深まりが良い塩梅に温もって^^;初っ端の「因果堀」での不破友之進の伊三次への詫び方が泣ける…シリーズ順を追って読んでこその安堵のため息も出ようってもんでい。「護持院ヶ原」はちょいとホラーっぽくてゾクっと(^^;;2016/02/16
じいじ
81
髪結い伊三次シリーズ第3弾。前作でこじれていた同心不破との関係、不破から頭を下げて縒りが戻るシーンに感動、目頭が熱くなった。本作は、二人の絡み場面が多く描かれているのがいいです。親分の命で、床に臥す女の赤子で手放した娘を捜すことになる。その娘の風体年齢が、お文と重なる…。伊三次とお文の歯がゆい関係ももそろそろ所帯をもつ時期が近付いてきたようだ。巻末の文庫あとがき「50を過ぎたら、老いと死を考えるようになった」とある。単なる予感なのか、すでに乳癌の病と闘っていたのか気になってしまった。第4弾が楽しみだ。2016/02/12