内容説明
暇と不満を持て余す退職老人と、家庭崩壊のため援助交際へと向かう女子高生。二人が出会い、共謀して巻き起こした恐喝事件の顛末は―。根拠のない生、無意味な現実を漂う、現代の孤独な魂はどこへ辿り着くのか。ハイビジョンドラマ化された話題作。衝撃の小学生集団レイプを描いた「少年倶楽部」を併録。
著者等紹介
柳美里[ユウミリ]
昭和43(1968)年、神奈川県生まれ。高校中退後、東京キッドブラザースを経て、昭和63年、劇団「青春五月党」を結成。平成5年、「魚の祭」で第37回岸田国士戯曲賞を受賞。平成8年、「フルハウス」で第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。平成9年、「家族シネマ」で第116回芥川賞を受賞
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
187
定年退職した60代の弦一郎。未菜たち4人の女子高校生(コギャルなどと呼ばれていた)。その両者の間に接点はないはずなのだが、実は思いがけない共通点があった。「残された時間が少ないという焦り、自信のなさ、世の中になにも期待しないで滅びを待ち望んでいるような」というのがそれである。そして、この両者の軌跡が交錯するところに、この物語は成立する。その交点はきわめて危うく、また脆い。だから小説の後に(読者にとっては読後に)残るのは、そこはかとない空虚である。こんな形で東京の今(十数年前だが)を照射するのがこの小説だ。2015/04/18
Twakiz
30
2002年の作品なので、当時の「コギャル」「援交」といったテーマの「女学生の友」居場所を失った初老男性のやるせなさと、女子高生たちのなんだか厭世的なやりとりが自分には重苦しかった。未菜ちゃんがちょっとまっとうな感性の持ち主で救われた。「少年倶楽部」はイライラや性欲や家庭の問題やイジメや進学や、、の思春期のもろもろに翻弄される少年達の姿を描く。婦女暴行未遂の件や、おさななじみの亜美ちゃんとのエピソードなどがいまひとつうまく結びつけられず。読後感がさやわかな作品ではなかったです。2017/03/30
みかさ
11
救いの無いようで、現実にあるような人物達がリアルに書かれている。でも寂しさだけしか感じなかった。2014/10/11
kera1019
8
自分の気持ちとか思惑と関係なく過ぎていく毎日の隙間を埋めようとすればするほど、自分がわからなくなる感じがすごくわかります。 気持ちの良い言葉を並べた小説も良いのですが柳さんの描く焦りとかイライラに親近感を感じます。2018/04/14
らすかるがみ
6
現代社会の影の部分を見るというかそういう類のものを見る気持ちになれる作品2014/02/21