文春文庫<br> タマリンドの木

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文春文庫
タマリンドの木

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  • サイズ 文庫判/ページ数 221p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167561055
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

人は結局は自分のために愛するのかもしれない。自分らしい自分になるために、自分以外の誰にも愛しようのない自分を選ぶのか──

内容説明

会社員の野山が出会った、タイのカンボジア難民キャンプで働く修子。偶然の出会いから二人の距離は急速に近づくが、修子はタイに戻ってしまう。残された野山は彼女を追いかけて、難民キャンプを訪ねるが、そこには修子の姿はなかった。自分の意思を貫きひたむきに生きる女性と優しくて不器用な男の愛の物語。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

332
人がある日、突然に恋に落ちる過程が実に鮮やかに描き出される。もっとも、そこから"to make love"へは都合がよすぎる展開ではあるが。その恋は落ちるに値するものの、男にとっては捨てなければならないものもまた多い。小説の最後は予想通りに爽やかではあるものの、甘さもまた否めない。これでは褒めているのか、貶しているのかわからないのだが、モチーフとしてのタマリンド、風車発電、アランヤプラテート(タイ)、トロムソのオーロラの表現など、いずれも池澤夏樹ならではの練達の技が冴える。2017/10/14

chantal(シャンタール)

81
風車に農業にタイでの列車の旅。この後の作品に出てくる情景がこの初期作品ですでに描かれている。そこに池澤さんの原風景があるのかな。東京の会社員野山と、タイのカンボジア難民キャンプで働く修子。恋愛か自分の人生か、難しい選択を迫られた時の気持ち、わかるなあ。切ないよね。91年当時のカンボジアはまだ酷い状況で、そして今でも世界のあちこちに紛争地帯は存在している。自分が如何に恵まれているか思い知る。タマリンド、どんな木なのだろう。誰もがタマリンドのように真っ直ぐに生きられる世の中でありますように、と願いながら読了。2021/05/08

翔亀

50
まるごと恋愛小説。自分の感性に忠実に強い意志をもって自由に生きる女性と、社会や組織に絡めとられ自信のない男性という構図は、少し前に書かれた短編「マリコ/マリキータ」と瓜二つだ。しかし、結末が真逆ということだけでなく、読後感はかなり違う。マリコは意志を貫くが南国の風土に同化して天性のままに生きる(だからマリキータとなる)。男性から見ると異質ゆえの幻想となり、結ばれることはない。恋愛小説というより二つの文化-文明と自然の対立項が表現された。本作の修子の向かうところはマリコと同じだが、かなり意思的である。↓2015/02/25

mt

33
再読。タイの難民キャンプで生き抜く決心をした女性と、日本でエンジニアとして働く男性の純愛。ともに暮らす選択肢は、男性が職を捨てキャンプに身を投じるのみ。単純だが難しい恋の行方を辿る小説を美しいプロローグから滑り出し、池澤夏樹らしい舞台設定と、決して激することのない言動で穏やかに進行させる。著者の代表作ではなかろうが、さまざまな恋愛の一つのあり方として、丁寧に書き込まれた優れた作品だ。恋愛を書くことが目的のこの小説に、タイ、カンボジア、ヴェトナムを取り巻く紛争と大国の思惑を書き忘れないのも著者らしい。2015/10/03

まさ

25
心地よい読後感です。年末はこの本の爽やかな風とともに。まじめな大人の恋愛小説ですね。女性の芯の強さに羨望も感じました。それとともに現地での難民キャンプの様子や、現地知らずの勝手な難民応援も伝わってくる。タマリンドの木はまっすぐに伸び、ずっと上の方から枝が出る。自分の人生もそうでありたい。2021/12/31

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