文春文庫<br> 胸の香り

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文春文庫
胸の香り

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  • サイズ 文庫判/ページ数 190p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784167348144
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

男と女、母と子、人それぞれの愛憎と喜び悲しみを、三十枚の原稿に結晶させた珠玉の七篇。人生の陰翳を描き惻々と胸を打つ短篇集

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

121
原稿用紙30枚程度の7つの短編。短いながら、1冊の長編を読み切った満足感を与えてくれる小説が多くて、改めて作家としての宮本輝の凄みを感じた。私の好みは冒頭の「月に浮かぶ」と最後の「道に舞う」だった。「月に浮かぶ」は男女の不倫の修羅場を正面から描くもので、にっちもさっちもいかない男の胸の内がまっすぐ伝わってくる。作品の中で描かれている満月が効果的。「道に舞う」は、地を這うようにして生きている貧しい母親と娘の姿が心に刻み込まれる。その二人を白い蝶にたとえるところに、宮本氏の人間としての優しさを感じた。2015/03/01

遥かなる想い

121
宮本輝が以前インタビューで、「自分の本で読んで欲しいのはどの本ですか?」という質問に対し、「ぜひ 私の 短編集を 読んで欲しい」と答えたのが妙に心にかかり、立て続けに宮本輝の短編集を読んだことがある。巻末の書評にある「七つの修羅」という表現が的確かどうかは別にして、宮本 輝らしい作品が集められている。ただ 初期の作品集と比べて本作品集は母になり力点をおいたため、青春の哀しみのようなトーンはいくぶん薄れている2010/05/12

アナーキー靴下

86
短篇7作品収録。個人的に不倫話には大変狭量であると自覚があり、拒絶感が勝ってしまう。そのうえ主人公は中年のおじさんばかり、繊細な心の機微が覆い被さってくるのが仇となり、前半の作品は楽しめなかった。「深海魚を釣る」は作品としてというより、著者の人に対する姿勢が滲むようなラストに感銘を受けた。『葡萄と郷愁』でも、言葉だけ追っていたら薄っぺらく見えるときでさえ、心の内奥に不定形の強い何かがある、と感じさせるのが巧みと思ったが、その所以に触れたような。「道に舞う」も良かった。自分まで肯定された気持ちになる感覚。2021/09/07

美雀(みすず)

78
切ない七つの話。男女であったり、親子であったり、兄弟であったり、息子の友達であったり…。何らかの事情を抱えて生きていく。他人には決してわからない心情が綴られて、その結末にほっとしたり、切なくなったりしました。短いけど余韻がいつまでも響きます。2015/04/30

kinkin

70
大人の話。口当たりがよくのどごしもいい、そして甘い、そのような話ではない。どれも静けさと苦さが入り混じった独特の雰囲気が感じられる。そしてどの話も会話の妙というものも読みどころ。七つの話の中で「月に浮かぶ」、「深海魚を釣る」、「道に舞う」が気に入った。とくに「道に舞う」の舞台である街は暑くて埃っぽいなかで聞こえる関西訛りがとてもしっくりしている。彼の作品は一回目より二回目という風に読むごとに面白さや奥深さが染み出してくのではないかと思った。2015/05/04

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