文春文庫
私の中の日本軍 〈上〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 329p
  • 商品コード 9784167306014
  • NDC分類 392.107
  • Cコード C0131

出版社内容情報

自己の軍隊体験を、深刻ぶらず冷静に、鋭い観察眼と抜群の推理力とで分析することにより、あやまれる「戦争伝説」「軍隊伝説」をくつがえし、その実体を解明する

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

紙狸

11
単行本は1975年、文庫は1983年に刊行。山本七平の作品を読んでいるうちにこの本、すなわち戦争体験に基づく本にまでたどり着いた。複雑な本だ。1970年代に朝日新聞の本多勝一と「百人斬り競争」を巡る論争をしていた。その論争の部分と、山本自身のフィリピンにおける軍隊体験を記した部分が交錯している。戦時中の一般の日本人の陸軍理解について「一知半解」だった、と論じている点は重要だ。それがとんでもない「戦意昂揚記事」が生み出される素地になった。戦地における陸軍のリアリティを伝えようと山本は格闘している。2021/11/09

nakagawa

7
山岡七平氏は、空気の研究という本で有名な人物である。そんな彼が戦争中に体験したことを踏まえて「百人斬り」を事実ではなくて虚報だということを論証していく。百人斬りというのはこの本を初めて知った。2017/08/21

Hiro

3
日中戦争時のいわゆる百人斬り競争について当事者とされ戦犯として死刑となった軍人の実像に迫る一方それを報道した側の報道責任をも強く追求しようとした本書だが、その事件だけでなく書名の通り広く日本陸軍一般の実態を克明に包み隠さず暴き出した力作だ。著者のルソン島での生死の狭間での戦争体験とその後の捕虜体験に基づく話は圧倒的な迫力ときめ細かな描写力を持って生々しく迫ってくる。過酷で理不尽で無謀であまりにも情けない国策に翻弄された先人たち、と言っても私の祖父や父の世代のことではないか。現状への類推を考えたい。2022/02/17

新 フミト

3
「百人斬り」の虚報性について自らの軍隊体験を通して述べているものである。中でも所属部隊が壊滅し、ジャングルという生き地獄の体験談と軍隊内では羽振りのよい中隊長クラスの将校が実社会では裏長屋住まいの貧乏生活をしている事実に驚いた。この様な生活のギャップが硬めの皇国思想につながっていったのでないか。2018/03/26

ゆーいちろー

3
「百人斬り競争」なる新聞報道が戦時中にあり、また戦後その記事に対して論争があったということを今回初めて知る。本書は「百人斬り競争」が「事実」ではなく「虚報」であったという立場から、そういったことが起こり得る土壌、当時の空気を筆者個人の軍隊経験から解明していこうと試みている文章である。軍隊内のいじめ、新聞記者の特権的優越、銃後の国民の無知と無責任な熱狂…このようなことは現在でも確実に起こり得ると強く感じるし、僕たちはあの戦争の教訓を全く理解していないし、あの時の「状況」を乗り越えていないとも思う。2017/04/22

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