内容説明
突然の災厄が、嘉兵衛を襲った。彼自身がロシア船に囚われ、遠くカムチャツカに拉致されたのだ。だが彼はこの苦境の下で、国政にいささかの責任もない立場ながらもつれにもつれたロシアと日本の関係を独力で改善しようと、深く決意したのである、たとえどんな難関が待ち受けていようとも…感動の完結篇。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
レアル
78
最終巻。前巻、前々巻のロシアの余談で足踏みだった嘉兵衛物語。この巻ではまるでそれらの進行を取り戻すかのように一気に加速して進みだす。そして前巻までの詳細過ぎるまでのロシアの余談が、より深みのある物語へ仕上げる為のものだったとこの巻を読んでいて気づく。嘉兵衛の胆力が人生を変えたのだが、幼少期の頃を考えるとこれだけの商人になるだけでも出世物語なのに、ロシアとの交渉人とまでなるなんて何と奇数な運命なのだろう!そしてまたこういう小説を読む度に思う。日本には鎖国という何たる奇妙な時代があったのだろうか!とも。。2016/06/10
優希
76
最終巻です。この巻はやけに小説らしく感じました。ロシア兵に囚われるという突然の災厄に襲われる嘉兵衛。カムチャッカに拉致されたことで、ロシアと日本の関係を正当化しようとする覚悟は見事です。しかし、最終的に嘉兵衛の人生と共に高田屋も一代で終わりを告げるのが辛いところですね。波乱万丈の物語でした。2019/01/15
NAO
73
嘉兵衛にとって好運だったのは、彼が淡路を出て以降出会う人物のほとんどが嘉兵衛のことを認め、彼の本質を正しく理解してくれたことだろう。嘉兵衛をカムチャッカに連れて行ったディアナ号の指揮官リコルドも、言葉は通じないながら嘉兵衛の人柄を理解し、愛し、嘉兵衛を信じ続けてくれた。出会った相手が悪かったら、嘉兵衛は、何ひとつできないまま捕虜として異国の地に果てたかもしれないのだ。この高田屋嘉兵衛は、稀代の強運の持ち主だったのだろう。そして、その嘉兵衛がロシアと日本の調停役となったことは、日本にも幸運なことだった。
k5
72
ここまでためてきたものが爆発する感じの面白さ。高田屋嘉兵衛という教科書に載っていない人物の魅力を縦横に描いています。異文化コミュニケーションと命をかけた交渉の重みが抜群のエンターテイメントであるとともに、ナショナリズムではなく人間どうしの交流こそが外交であるという司馬遼太郎の信念のようなものを感じます。こじつけですが、司馬文学の北方への憧れとは、中央権力が及ばない場所での多様性への期待値なのではないかと思いました。2023/03/19
やっちゃん
68
外交官はここまで思慮深くなきゃダメなのか。嘉兵衛の常に如才なく、譲れぬとところは厳しく要求する交渉の上手さよ。海外でヘコヘコしてる現代人に参考になりますね。物語の面白さは失速したけど良い小説だったなあ。2022/11/23