文春新書
もう牛を食べても安心か

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  • サイズ 新書判/ページ数 242p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784166604166
  • NDC分類 645.36
  • Cコード C0295

内容説明

アメリカ産牛肉輸入再開に向け政府は全頭検査を緩和する方向にあるが、著者の見解は時期尚早。狂牛病は原因も対策もまだ何も分かっていないからである。本書は警告を込めて現状を解説しつつ、一歩踏み込んで問題を考察する。病原体はどうやって牛からヒトへと種の壁を越えたのか。そもそもヒトはなぜタンパク質を食べ続けなければならないのか。その問いは、生きているとはどういうことか、という問いにも繋がっていく。食と生命をめぐる出色の論考。

目次

第1章 狂牛病はなぜ広がったか―種の壁を越えさせた“人為”
第2章 私たちはなぜ食べ続けるのか―「動的平衡」とシェーンハイマー
第3章 消化するとき何が起こっているのか―臓器移植、遺伝子組み換えを危ぶむ理由
第4章 狂牛病はいかにして消化機構をすり抜けたか―異物に開かれた「脆弱性の窓」
第5章 動的平衡論から導かれること―記憶は実在するのだろうか
第6章 狂牛病病原体の正体は何か―未知のウイルスか、プリオンタンパク質か
第7章 日本における狂牛病―全頭検査緩和を批判する

著者等紹介

福岡伸一[フクオカシンイチ]
1959年、東京生まれ。京都大学卒。米国ロックフェラー大学およびハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授を経て、青山学院大学理工学部に新設された化学・生命科学科教授。分子生物学専攻
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

359
2004年の著作。福岡伸一氏がマスコミに華々しく登場する以前の作か。タイトルは狂牛病(正式名は牛海綿状脳症だが、福岡氏はあえてこちらを使う)が前面に出ており、確かにトピックスはそうなのだが、同時に全体としては「動的平衡」を語ってゆく。その過程でシェーンハイマーの成した業績を顕彰するとともに、その一方でプルンナーのプリオン説への疑問を検証する。学術的な成否の判断はできないが、彼の論はきわめて説得的であることは確かだ。さて [安心か」との命題だが、「きわめて不安」ということになる。それはおそらく現在に至るも。2019/08/13

藤森かつき(Katsuki Fujimori)

18
狂牛病の話題は、いつの間にか耳にしなくなっている。BSEというのすら余り聞かない。だけど、未だに、狂牛病の原因は明確には分かっておらず、厳密に特定できていないというのが怖い。わかっているのは共食いが原因の可能性が高いということと、病原体は食べることで感染すること。良く焼いた程度じゃ駄目みたいだし、消化液でも退治できない。潜伏期間が長いというのも恐ろしい。今は、普通に牛肉食べる世の中になっているけれど、完全に安全になったわけではないのだろうし、感染した肉とかが出回らないように色々慎重にやっていってほしいな。2019/09/20

mitei

17
狂牛病の原点から、日本政府の対応の仕方などとても分かりやすく書かれていた。そして終章には自然との共生することが大事だとのことだが確かになぁと思う。2011/03/27

あんさん

5
コロナ感染症騒動を考えていて、狂牛病騒動を思い出し読んだ。勿論全く違う病気であり、それよりも、本書からは科学的に考えていくことについての具体例が学べたと思う。動的平衡にも触れられていて下手なミステリー小説より面白かった。「確かに、イギリス政府は一九八八年七月、肉骨粉飼料を反芻動物にタンパク質飼料として使用することを禁止した。しかしこれはあくまで国内に限ったことだったのである。(中略)危険なものを危険だと知りながら、無警戒の別な国に売り抜ける。これは犯罪以外の何ものでもない。」2021/10/28

Naota_t

4
★3.5/狂牛病だけにとどまらない化学的な背景の説明に加えて、内容は難しいものの、さまざまな翻訳を手掛ける著者の文章が良く、予想以上に引き込まれた。病気の動物をすり潰して粉にした肉骨粉を食べた牛が狂牛業になり、それが人にも感染したのがことの発端だ。経口で摂取し、罹患するメカニズムをプラナリアを使った実験は興味深かった。中でもクールー病の解明に際して、死者を悼んで脳を食べるフォレ族が一役買ったというのは、軽いホラーで衝撃だった。題名からすると政治的な匂いを感じるが、実はかなり骨のある内容で満足度は高い。2022/10/02

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