内容説明
サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の新訳を果たした村上春樹が、翻訳仲間の柴田元幸と共にその魅力、謎、すべてを語り尽くす。ホールデン少年が語りかける「君」とはいったい誰なのか?村上が小説の魔術(マジック)を明かせば、柴田はホールデン語で、アメリカ文学の流れのなかの『キャッチャー』を語ってのける。永遠の青春文学の怖さ、ほんとうの面白さがわかる決定版です。「幻の訳者解説」併録。
目次
ライ麦畑の翻訳者たち―まえがきにかえて(村上春樹)
対話1 ホールデンはサリンジャーなのか?(「君」ってだれだ?;地獄めぐり;「あれよあれよ」と ほか)
対話2 『キャッチャー』は謎に満ちている(アントリーニ先生再び;ホールデンと少年カフカ;ハック・フィン、カポーティ、フィッツジェラルド ほか)
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』訳者解説(村上春樹)
Call Me Holden(柴田元幸)
著者等紹介
村上春樹[ムラカミハルキ]
1949年京都府生まれ。79年『風の歌を聴け』でデビュー
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年東京都生まれ。東京大学文学部助教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mayumi225
53
翻訳夜話1を読み途中だが、村上春樹訳「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の読後ホットなうちにと思ってこちらを先行。柴田元幸との充実の対談、村上春樹が熱い!自分の読後感とも違和感なく視点が広がり、作者や作品背景を知ることができて、すごく面白かった。村上春樹の翻訳がわりと原文を想像させてくれるからか、あ〜これは言葉を逐一訳すとすごい悪態になるけど、英語だとある意味単に話し方の癖なんだよな、とか、語りかけのyouは訳し方難しいだろうな、とか思いながら読んでいたので、答合せをするようで興奮。凄い。奥が深くて痺れます。2018/08/19
Shintaro
43
前回「キャッチャー」で挫折したので本作の助けを借りて読了した。どうも親目線で読んでしまって、ホールデンが惰弱に感じられて仕方なかったのだ。しかし本作とキャッチャーを併せて読むと、文学に対して愛が、リスペクトが欠けていたのは僕だったと言わざるを得ない。村上春樹は翻訳者としてもサリンジャーと文学への愛情を隠さない。ひとつだけキャッチャーの読者にお勧めなのは、日本で唯一キャッチャーの版権を持っている白水社の契約条項で訳者解説が載っていないが、本作では特に『キャッチャー・イン・ザ・ライ』訳者解説が掲載されている。2016/10/30
田中
41
久しぶりの再読で『キャッチャー』とこの本を同時に読んだ。村上さんの分析的な評と、読解する視点が具体的で、『キャッチャー』の世界がより克明に見わたせた。「ホールデン」と「サリンジャー」は、現実的に互換関係にあったのだろう。『キャッチャー』を再読して気になったのは「ホールデン」が純情無垢な感覚に異常な執着をみせる。それを失い別ものに染まるのを拒絶しなから社会を罵倒していたようにもとれる。イノセント宇宙は気持ちの良い安住地だ。でもそんな環境はないから孤絶した所に身を置くしかない。訳者解説も収録されています。 2019/12/29
Y2K☮
41
名著。学者の柴田氏と作家の春樹氏だから生み出せる緩やかなケミストリー。「キャッチャー」とその著者になぜ惹かれるのか直観できた。「海辺のカフカ」や太宰治との共通点にも唸るしかない。春樹氏の中にもサリンジャー要素はあって、でも彼はもう少し俗世間と折り合いを付ける事ができた。森博嗣も同じ。それはサリンジャーやホールデンのお蔭かもしれない。私だって本に係る仕事だから耐えられるが、そこに絶望したらひきこもるしか無い。社会との戦いの過程でイノセンスはいずれ消える。だがゼロにはしたくない。成長しない自分も残しておこう。2019/02/05
Nobu A
39
5年程前に読んだ「翻訳夜話」の続編を読了。03年刊行。本著は村上春樹が上梓したJ.D.サリンジャーの「ライ麦畑で捕まえて」の新訳の裏話を二人の対談形式で掲載。翻訳家としての葛藤や矜持と言えばやや大袈裟かもしれないが、執筆に当たっての拘りや悩みを陳述。両者とも翻訳の泰斗として阿吽の呼吸でこれでもかと語ってくれる。恥ずかしながら名著を未読の私としては色々と有益な情報が満載。特に名著たる所以が興味深い。一方で未読が故に消化不良気味なのも確か。野崎孝旧訳もあるが、まずは村上春樹新訳を近い内に手に取ってみよう。2024/10/15