文春新書
還ってきた台湾人日本兵

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  • サイズ 新書判/ページ数 214p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784166603084
  • NDC分類 210.75
  • Cコード C0223

内容説明

昭和四十九年暮れ、インドネシアの密林で元日本兵中村輝夫が発見された。しかし、敗戦も知らず約三十年間も孤独に生き抜いた中村は、台湾の高砂族出身であったがゆえに、日本国からは日本人とは認められなかった。戦前、日本人として教育され、日本兵として出征したにも拘らず―。日本語でものを考え、自らを日本人だと信じていた中村は、その後どうしたか。今、高砂族の人々は日本にどんな想いを抱いているか。丹念な取材で綴る忘れ去られた現代史。

目次

第1章 聖地モロタイ島
第2章 元空軍中尉スパルディ
第3章 待っていた悲劇
第4章 血書したため志願兵に
第5章 インドネシアの激戦地で
第6章 逃亡兵の汚名
第7章 霧社事件とその後の人々
第8章 日章旗はためく慰霊碑

著者等紹介

河崎真澄[カワサキマスミ]
1959年生まれ。東京都出身。日本大学芸術学部放送学科卒業。日本工業新聞経済部記者、産経新聞経済部記者、同外信部記者を経て、2002年9月から産経新聞台北支局長(日本工業新聞台北支局長兼務)。95年6月から96年11月までシンガポール国立大学華語研究センターに産経新聞社から派遣留学
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ふう

74
複雑な思いで読み終えました。人はどれだけ歴史に翻弄されるのでしょう。 台湾が日本に統治され、日本人としての教育を受けたことは知っていたのに、日本兵として戦地に赴いた多くの台湾人がいたことは知りませんでした。横井さん小野田さんが敗戦を知らずに、ジャングルの中で孤独に生き抜いてきたその年月よりさらに長く生きていた台湾人兵士がいたことも。彼の名は中村輝夫。台湾高砂族の民族名はスニヨン。戦後国民党政権下になってからの名は李光輝。なぜ彼が日本兵となり、戦後30年もジャングルで生きてきたのかを知ると、戦争のむごさと→2017/11/25

スー

17
最後に見つかった日本兵「中村輝夫」は3つの名前がある、民族名「スニヨン」漢名「李光輝」これだけで彼の人生の複雑さがわかります。彼は30年以上ジャングルで妻子に生きて会うために生きのび、再会した時は生後間もなかった息子が32才、妻は再婚していて台湾は日本じゃなくなり言葉も通じない別世界の様になっていた。帰国後日本から未払いの給料や寄付金を貰いアミ族一の大金持ちになるが、他のアミ族や日本から補償金を貰えなかった元日本兵から妬まれ居場所を失っていく。中村の人生は日本に振り回され壊された申し訳ない気持ちで一杯です2018/08/19

ののまる

10
インドネシアで1974年12月に発見された中村輝夫。アミ族出身の高砂義勇隊だった。小野田さんや横井庄一さんと比べ、ほとんどの日本人は記憶にないという事実が、日本兵として闘ったり死んでいった台湾兵の存在に無関心な状況を示している。民族スニヨン→日本名中村輝夫→ジャングルにいるうちに勝手につけられていた漢族名:李光輝。3つの名前が示すように、高砂義勇隊の台湾兵は日本植民地期、戦中戦後と苛酷な状況を生きるしかなく、台湾の戒厳令が解除されるまで沈黙を強いられた。日本人と認められたいがため志願をしたというのに。2021/11/04

unpyou

4
終戦を知らず南島で戦い続けていた日本兵と言えば横井さん小野田さんが有名だが、彼らに続き1974年にインドネシアで発見された中村輝夫という日本兵がいた。あまり知られていないのは、彼が台湾土着の高砂族であり、当時の日台は国交断絶しておりメディアでもあまり取り上げられなかったためという。本書は当時現地に唯一記者を派遣した産経新聞が2001年に連載した記事をまとめたもので、皇民教育により真摯な帝国臣民として出征した一方、戦後は日本からろくな補償もなく台湾国民党政府からも白眼視された彼らの悲劇的な歩みがよく分かる。2017/04/12

CTC

4
03年文春新書、現在は重版未定か。著者、産経台北支局長在任時の著作。小野田寛郎さんの10ヶ月後に還ってきた中村輝夫=スニヨンさんや、元高砂義勇隊員らの姿を記すことで、台湾と日本の絆を描く。本書巻末には、当時中華民国総統を退いて間もない李登輝さんが一文を寄せている。スニヨンさんの存在が日本で忘れられようとしているのは、スニヨンさんが日本人でない事も大きいだろうが、日中国交回復直後の複雑な情勢下、スニヨンさんの日本入国や記者の現地取材が儘ならず、台湾国内でも元日本兵である事が憚られるという事情があった。2016/03/01

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