出版社内容情報
古代中国史の中でこの男ほど謎と伝説に彩られた武人はいない。遊牧の民の子が苛烈な試練をへて商王朝を覆滅する雄渾な歴史叙事詩
内容説明
遊牧の民の子。少年の名は“望”という。苦難のすえ商王朝をほろぼした人である。その波瀾の生涯を雄渾な筆でえがきつくす、全三巻。感動の歴史叙事詩。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とんこつ
7
今まで読んできた宮城谷さんの作品で、強いて物足りないところをあげるとするならば、自然の描写が弱いということ。読んでいても中国の広大な自然がどうも脳裏に浮かんでこないのである。しかし、『太公望』は違った。日が昇る直前の草原の青が、鮮明に脳裏に映し出される。/「商王を殺す」この動機だけで生き続けていく望が、やがて自身に疑問を抱き、何のために生きていくのかを問うていく姿がとても印象的だった。終わりなき道の先に、僕たちは何を見いだしていけばいいのか、望と一緒に考える想いで先を読み続けたい。2012/12/26
そうび
6
望くん、モテモテ。羌族が供物として逐われることがなければ、中原にこの異物は生じなかっただろう。洞人の修行のあたりから一気読み。強さを秘めたヒーローが無双するのは、いつの世でも好まれるね。2023/06/10
nonicchi
5
図書館本。人に勧められて。中国のこの頃(紀元前千年頃)には全くうといので、このころようやく文字が支配階級で使われ始めたなど、勉強になる。なにより内容が面白い。なにゆえ望はこんなに艱難辛苦を味わうのか。「大志を抱いた人はたいてい大変な人生を歩む」らしいが…。2017/04/06
ロウ
5
殷周革命の時期といえば、丁度神話から人間の歴史への過渡期も言える時期。その時代を人の物語として構築して書いており、読みやすい。宮城谷昌光さんの著書の中でも読みやすい方。2011/11/17
だまし売りNo
4
甲骨文字が使われていた古い時代の話であり、太公望の出自は不明である。本書の設定は興味深い。太公望は遊牧民・羌族の子であった。ところが、生贄にするために一族が滅ぼされてしまう。太公望の原動力は殷へ復讐であった。太公望には聖人君子のようなイメージがあるが、本書の方が現実感がある。 2018/03/19