出版社内容情報
池井戸潤の最新長編の舞台は、
「東京箱根間往復大学駅伝競走」――通称・箱根駅伝。
青春をかけた挑戦、意地と意地のぶつかり合いが始まる。
ついに迎えた1月2日、箱根駅伝本選。
中継を担う大日テレビのスタッフは総勢千人。
東京~箱根間217.1kmを伝えるべく奔走する彼らの中枢にあって、
プロデューサー・徳重はいままさに、選択を迫られていた――。
テレビマンの矜持(きょうじ)を、「箱根」中継のスピリットを、徳重は守り切れるのか?
一方、明誠学院大学陸上競技部の青葉隼斗。
新監督の甲斐が掲げた「突拍子もない目標」の行方やいかに。
そして、煌(きら)めくようなスター選手たちを前に、彼らが選んだ戦い方とは。
全てを背負い、隼斗は走る。
内容説明
217.1km。伝説のレース、開幕。明誠学院駅伝チームを率いることになった、商社マンで伝説のOB・甲斐。彼が掲げた“規格外”の目標は、“寄せ集め”チームのメンバーだけではなく、ライバルやマスコミをも巻き込んでゆく。煌めくようなスター選手たちを前に、彼らが選んだ戦い方とは。青春とプライドを賭け、走り出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
328
池井戸潤まだまだ健在。一区間ごとにここまでやれば、それは上下巻になるよねという濃度。中継するテレビ局にもスポットをあてたあたりは著者なりのスパイスなのだろうが、今回は直球勝負をするというのが狙いだったのではないか。これまでの池井戸黄金パターンを省みずに冒険をした『民王2』『ハヤブサ消防団』から、いったん小説家として原点回帰を図ってきたかと深読みする。甲斐や辛島といった大人たちの内面は描かれず、やや超然としすぎているのも"俺たちの"箱根駅伝で、主役はどこまでも選手たちだからということなのだろう。 2024/05/02
昼寝猫
114
下巻を読了。いきなりレース本番から始まる。1区から順に選手たちの戦いが続き、次の襷へ繋がれていく。スピード感があり高速で流れるようにストーリーが進む。選手の心情や個々の挑戦が胸を打ち、放映するTV局側の内部事情が更に興味深い。対立する敵役も要所要所に配置してドラマを複層的に見せている。池井戸さんは本当に上手いし手馴れていると感じる。小さな起伏を盛り込みつつ、むしろ筆を抑えて進めながら、ラストの7〜10区で大爆発する。〝いい小説を読んだ〟というより〝面白い小説を読んだ〟という感覚が強いが読んで損はない。2024/05/12
hiace9000
108
高らかなファンファーレ。オープニング曲が217.1kmのドラマ開始を告げる。『あまこま』を傍らに、克明に再現される区間重要ポイントの通過を確認しつつ、激走する選手たちに紙上追走する読書時間。"俺たちの箱根駅伝"にかけた選手達の矜持と情熱と力はライバルやマスコミを巻き込み、襷と魂の継走が敵をも味方に変えていく。箱根ファンならツボるメインアナ辛島さんの「語り」は、中継地点のたびにこれでもかと涙を噴き出させ頬を濡らす。激闘は数々の"箱根名言"と共に幕を閉じ、全編読了。箱根ファンならずとも、今作の感動、是非共に!2024/05/17
はにこ
93
正直、上巻を読み終えた時は、テレビ局の下りは要らないんじゃないかと思っていた。しかし、下巻での辛島のアナウンスによりその考えは打ち消される。走る一人ひとりの想いや背負っているものが伝えられることによって上巻での伏線が回収されていく。それが涙腺にめちゃめちゃ効いてきて電車の中で耐えるのがキツかった。襷が繋がり終わりが見えるにつれ、いつまでもこの光景を見ていたい。そんな気になる作品だった。2024/04/26
のぶ
87
下巻は箱根駅伝本戦のスタートから始まる。下巻で独立して描かれていた選手と、報道の描写がひとつになってレースを伝えていた。オープン参加の関東学生連盟の選手を中心にして進んでいく。このスリルは何だ!実際の駅伝中継以上に臨場感が迫ってきて素晴らしいものがある。学生連合の活躍も喜怒哀楽を込めて描かれていて、本から目が離せない。体も目頭も熱くなってとても爽やかだった。失敗からの逆転。今までの池井戸さんの物語の定番ではあるが、こういう本が読みたかったのです。ラストの落としどころも的確で、本当に楽しめました。2024/05/08