Xと云う患者―龍之介幻想

電子版価格
¥2,037
  • 電書あり

Xと云う患者―龍之介幻想

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 46判/ページ数 368p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163910017
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

出版社内容情報

あの文豪の生涯と作品を織りまぜて、リシャッフルし、夢見直して、12の妖しい、美しいピースに仕立てた本。それだけで十分すごいが、さらにこの日本語版は、原文の独特のリズムを緻密に再現し、等しく妖美な作品を再創造している。奇跡のような一冊。

――柴田元幸



本書を読む者は 必ずや二度三度と 芥川の文学的狂気に侵される。



イギリス暗黒文学の旗手が、芥川龍之介の生涯を恐るべきヴィジョンと魔術的な語りを通じて幻想文学として語り直す。



芥川龍之介。東方と西方の物語と伝承と信仰に魅せられた男。そのなかで静かに渦を巻く不安。それがページから少しずつ滲み出す。



半透明の歯車が帝都を襲った震災の瓦礫の彼方にうごめき、頽廃の上海の川面には死んだ犬が浮き沈み、長崎には切支丹の影が落ち、己が生み出した虚構の分身が動き出し、そして漱石がロンドンでの怪異を語る。河童。ポオ。堀川保吉。ドッペルゲンゲル。鴉。マリア像。歯車。羅生門、藪の中、蜘蛛の糸、西方の人――キリスト。私のキリスト。



ジェイ・ルービン訳の芥川作品をピース自身の呪術的な語りとコラージュし/マッシュアップし/リミックスして生み出した幻想と不安のタペストリーを、コーマック・マッカーシーやリチャード・パワーズらを手がけた黒原敏行が芥川自身の文章と精密によりあわせて完成させた日本語版。芥川と幻想ノワールの結合として、原語版以上の衝撃をもって読者を眩惑する。



災厄と文学、狂気と詩情、日本文学と英国文学、現代文学と近代文学、現実と幻覚……すべての境界をおぼろに融かしてゆく文学と翻訳のはなれわざ。

内容説明

小説家、芥川龍之介。東方と西方の物語と伝承と信仰に魅せられた男。そのなかで静かに渦を巻く不安。それがページから少しずつ滲み出す。半透明の歯車が帝都を襲った震災の瓦礫の彼方にうごめき、頽廃の上海の川面には死んだ犬が浮き沈み、己が生み出した虚構の分身と邂逅し、キリストと信仰の物語に心を囚われ、漱石がロンドンでの怪異を語る。河童。ポオ。堀川保吉。ドッペルゲンゲル。鴉。マリア像。歯車。羅生門、藪の中、蜘蛛の糸、西方の人―キリスト。私のキリスト。イギリスの鬼才が芥川文学をコラージュし/マッシュアップし/リミックスして生み出した幻想と不安のタペストリーを、精妙に美しい日本語に移し替えた決定的翻訳。文学的にして音響的、イギリス文学であり日本文学であり、近代文学と現代文学を越境する野心作。

著者等紹介

ピース,デイヴィッド[ピース,デイヴィッド] [Peace,David]
1967年、イギリス生まれ。作家。1994年に日本に移り住み、仕事のかたわら執筆した『1974ジョーカー』で作家デビュー。『TOKYO YEAR ZERO』でドイツ・ミステリ大賞、GB84でジェイムズ・テイト・ブラック記念賞を受賞。2011年より、東京大学文学部で教鞭を執る

黒原敏行[クロハラトシユキ]
1957(昭和32)年、和歌山県生まれ。東京大学法学部卒。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

この商品が入っている本棚

1 ~ 2件/全2件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

144
日本在住のイギリス作家が英語で書いた作品。芥川龍之介の人生が、彼の作品を組み入れながら幻想的に描かれている。龍之介とキリスト教のかかわりに繰り返し触れる。蜘蛛の糸につかまるのは、龍之介であり、その紐を切ってしまうのも龍之介。それを泣きながらみるキリスト。幻想的な狂気への指南役が漱石という解釈、作者独自の谷崎や川端との交流のさせ方などが印象的。そして、知ってはいるものの、その終わり方に胸が痛い。芥川作品にあまり親しんでいないが人が読むと、もっと素直に入りこめるか、それとも分かりにくいのだろうか。2019/05/02

らぱん

58
怪作。12の連作短編によって創出された「芥川龍之介」の狂気は息苦しくなるような濃密さと緊張感があり、読了までに結構な時間とエネルギーが必要だった。入れ子状態などの構成で、リミックス的に芥川の作品とその文体が短編に侵入して、現実と幻想の境界が曖昧になり、徐々に壊れ、追い詰められていく芥川が執拗に描かれている。「Xと云う患者」の意味の原題"Patient X"を終盤では"X"を"cross"と読ませ受難者の十字架とする。その後、史実通り彼は自死する。芥川は贖罪者か。あるいは救済されなかったというのか。↓2019/11/06

燃えつきた棒

48
この物語を手に取ったのは、芥川がなぜ死を選んだのか知りたかったからだ。 だが、読み終わっても、それは依然として謎のままだ。 作者は、芥川の数多の作品を取り込んで、彼自身の芥川を創造している。 その様は、まるで芥川に取り憑かれているかのようだ。 同じく芥川に強く惹かれるものを感じる僕としては、この人の他の作品も読んでみたくなる。 『世の中をうしとやさしと思えども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば』(山上憶良、万葉集巻五) 芥川は、つげ義春が描く鳥師(『無能の人』第3話)のように翼を広げて飛び立ったのだろうか?2019/05/22

あさうみ

43
不思議な感覚になる本だった…芥川龍之介の作品に手を加え、新たな読了感を与えている。自分は教科書的な「羅生門」「蜘蛛の糸」などポピュラーな章しか読んだことがない…。彼の作品を読んでいる読者ほど楽しめる本に違いない。ルビやフォントなど細かな仕掛けを感じる。外国作家が書き、さらに和訳で整える仕事に敬服。2019/04/27

かわうそ

31
芥川龍之介の作品をコラージュした世界の中を龍之介本人が彷徨する幻想小説。それをさらに日本語に翻訳するのだから訳者においては大変なご苦労があったことと思われます。芥川作品はメジャーな数篇しか読んでいない私でも非常に面白く読めたのですが、もっと元ネタを読み込んでからいつか再読してみたいと思います。2019/05/09

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/13590537
  • ご注意事項