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紅梅

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  • サイズ B6判/ページ数 171p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163806808
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

05年春、癌が発見され、膵臓全摘の手術を受けた吉村昭の、1年半後の壮絶な死までを、作家でもある妻が硬質で冷静な筆で作品化。

内容説明

二〇〇五年二月に舌癌の放射線治療を受けてから一年後、よもやの膵臓癌告知。全摘手術のあと、夫は「いい死に方はないかな」とつぶやくようになった。退院後は夫婦水入らずの平穏な日々が訪れるも、癌は転移し、夫は自らの死が近づいていることを強く意識する。一方で締め切りを抱え満足に看病ができない妻は、小説を書く女なんて最低だ、と自分を責める。そしてある晩自宅のベッドで、夫は突然思いもよらない行動を起こす―一年半にわたる吉村氏の闘病と死を、妻と作家両方の目から見つめ、全身全霊をこめて純文学に昇華させた衝撃作。

著者等紹介

津村節子[ツムラセツコ]
1928年、福井県生まれ。学習院女子短期大学文学科卒業。53年吉村昭と結婚。在学中より小説を発表し、64年「さい果て」で新潮社同人雑誌賞、65年「玩具」で第五十三回芥川賞受賞。90年「流星雨」で女流文学賞、98年「智恵子飛ぶ」で芸術選奨文部大臣賞、2011年「異郷」で第三十七回川端康成文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

いつでも母さん

141
あの、作家・吉村昭の病発覚から家族に看取られ亡くなる瞬間までを、妻であり作家・津村節子の眼から綴った作品。この夫婦は仕事が生きがいだったのだなぁとあらためて思うと同時に、幾つになっても相思相愛。なかなかこのような最期を迎えられる夫もいないだろうなと・・作家同士の結婚生活など想像も出来はしないが、吉村昭は忘れられない作家の一人。癌家系と云うことから癌に対して感じるものがあったのだろうが、最期まで見事な逝き方だった。天晴れと云うより他ない。せめてわたしも最期は斯くありたい。2016/05/04

じいじ

97
2011年に上梓された本作、早々に買ったものの読まずに、否、読めずにいた(正確には、冒頭の10頁ほどで止まっていた)。物書きを仕事とする稀有な作家夫婦、夫吉村昭との1年余にわたる凄まじい病との闘いが綴られている。癌と闘う少々頑固一徹な夫を、仕事をつづけながら支え、看病する妻の強靭な精神力に頭が下がりました。私事ですが「完治は残念ですができない…」と医者から言われた肺気腫から11年過ぎた我が身には、たくさんの勇気をいただきました。辛い箇所も多々ありましたが、読んで良かったと思っています。2021/10/09

chimako

96
装丁は円山応挙の「老梅」 どんな経緯で本の登録をしたのか失念していたため歴史小説かと思い読み始めた。これは作者と夫であった吉村昭氏の闘病と別れを描いた私小説。手記のような味わい。「もう、死ぬ」と言って点滴の管を引き抜いたエピソードは有名だがそれまでの過酷な闘病生活を知るとまた印象が違う。地位も名声もやりがいのある仕事も手中にあった夫婦のそれぞれの思惑や悔恨。見送るが側は悔いが残る。先程共読で何故この本を登録したのか思い出した。吉村氏の『死顔』を読んだ時に奥さまの側から描いたものを読みたかったのだった。2016/04/15

KEI

51
読みたいと思いつつ、内容を知っていたので、手に取る事を躊躇した作品だった。作家である育子(著者)が夫君・吉村昭の1年半に渡る闘病生活を綴ったもの。作家活動と共に闘病を支える困難さは計り知れないものがあると思うのだが、それをやり切る妻、やり切っても足らないと思う姿や妻を案じる夫の同業者としての思い遣りに感動する。病を得て、2人は家の周囲を散歩する。「長い結婚生活で、こんなに一緒に過ごした事は無かった」。自然の描写の中に夫婦の絆の深さを感じる。最期にあたって本人の意思の強さ周到さに吉村氏は生ききったと感じた。2018/11/09

Rosemary*

48
題名と装画から、年初め一冊目として選びました。夫、吉村昭氏の舌癌発病から最期までの闘病記をあえて、客観的に淡々とつづられている。そのなかで、お互いがお互いに敬意をはった愛情の深さが感じられました。最期をむかえる壮絶な場面では涙を誘い、どうしても後悔が先に立ってしまう場面は、胸に迫るものがありました。母が同時にふたつの癌が見つかった時のことを思い出しながら読み感慨深い一冊になりました。2015/01/01

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