出版社内容情報
バリ島の“マユゲ犬”、心の中の海景、神戸のタンク山など、藤原新也の目が捉えた四十二の時代の風景と日常を綴った写真エッセイ集
内容説明
この写真文集は“マユゲ犬からバモイドオキ神まで”その興味の対象は世界の全方位にわたっている。思うに本書にも出てくる犬猫のたぐいの、世界に対する興味と言えば、食い物、異性のこと、それからせいぜい自分を飼っている主人といった三点セットくらいのものである。彼らは地下鉄サリン事件や酒鬼薔薇聖斗事件などで世の中がいかに騒然としていても一切われ関せず、裏町のあちこちで“ギャオ!!”と雄叫びを上げながら三点セットその一、異性の奪い合いにありったけの情熱を傾け、必死に駆けずりまわったりしている。私はそれを見ながら“お前、こんなご時世に、ようやるなァ”と半ば軽蔑しつつも、目まぐるしく変転する情報の海に翻弄されている人間をふと哀れに思い、とどのつまりは彼らのシンプル・ライフを崇めている自分をもそこに発見するのである。
目次
マユゲ犬の伝説
時間長者
天空の音楽
哀愁のブレックファースト
イギリスの普通の窓からの眺め
アイルランド・シチュー
神話
エンパイヤステートビル八十六階の老女
島の歌
山手線一周手相マラソン〔ほか〕