内容説明
蜘蛛女、巨女、シマウマ男、犬人間…意味あんのかよ、こんな世界!第92回文学界新人賞受賞作。
著者等紹介
吉村万壱[ヨシムラマンイチ]
1961年生まれ。大阪府在住。京都教育大学第一社会科学科卒業。2001年「クチュクチュバーン」で第92回文学界新人賞を受賞。独自の世界観で紡がれる奇想天外な物語で注目を集めている
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感想・レビュー
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優希
38
気持ち悪い世界観が広がっています。食べることと生きることと見ることをここまでぐちゃぐちゃに書いた作品はないでしょう。流れ出る擬音語に鳥肌が立ち、身の毛もよだつ思いにさせられます。人間でないのにどこまでも人間というのが恐ろしいですね。混沌の中で人間であろうとする姿にニヤリとしてしまうのは何故でしょう。不気味さのインパクトが強く、物語のテーマ性があまり見えてきませんでした。非常に独創性のある作品ではありますね。この本をどう解釈するかが難しいところです。2014/09/04
ミツツ
37
一編目は起承転結の「転」から始まるようでいてクチュクチュからのバーン!なのでした。二編目の「人間離れ」はこんな状況下にいたら私も人間離れしてしまうんだろうか。いっそ、ひと思いにやって欲しくなる。どちらも酷い有り様だけど、なんだか滑稽で嫌いじゃない。2019/05/15
ワッピー
36
読み友さんの推薦本。文明は突如崩壊し、人間は無秩序に変容し始める。変容者を集団から排除しても、直に自分たちも次々と変容し、すべての秩序は消滅する。逃げまどう人間たちは次第に集合体に吸収されていき、また再び破裂して個に回帰する。(クチュクチュバーン)同じ世界観の最前線で、サバイバルに効果あるとされる教えに意味も効果もなくても、それでも人は何かすがるものを求める。(人間離れ)ひたすら生き延びようとあがく人間の姿は醜くもまた愛おしいかもしれない。描写は過激だが、これこそ人間が生きる世界そのものではないだろうか?2019/11/26
おすし
28
『クチュクチュバーン』クチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュ…バァァァーン 『人間離れ』スッカンスッカンスッカンスッカンスッカンスッカン ──(付いてないはずの)逸物がちぢみあがるほどおっかねぇ萬壱ワールド。ホラーか、SFか、もしくは創世の神話なのか。尋常じゃない発想と表現力で大真面目に笑かしにくるが、凡人の私はただただドン引きするばかり。しかしそのうち癖になり、萬壱ワールドに打ちのめされるべく自ら尻を突き出す(比喩です)のであった。2021/10/13
田氏
27
「人間が机やシマウマと融合したり、手が6本生えたり巨大化したりしながら破滅に向かう純文学」なんて書評を目にした。アホなこと言いな、そんな純文学があるわけ、あったわ。生命も自我も秩序と境界を失っていくメチャクチャな世界の突き進む先は、有機物でできたミニチュア宇宙のクチュクチュな終焉であった。命、ないし存在を現象的に捉えた表題作。狂信にすがってでも生存しようともがく人々の、集合体としての生き様と死に様を描く『人間離れ』。どちらも木下古栗と友成純一をクチュクチュしたくらい悪趣味だが、何かバーンするものを感じる。2020/02/03