出版社内容情報
時は二十世紀前半、メイン州を舞台に堕胎と孤児のテーマに正面切って挑み、物語性に富むディケンズ的小説世界を構築した傑作長篇
内容説明
主人公ホーマー・ウェルズは、“望まれざる存在”として生を享けた孤児だが「人の役に立つ存在になれ」というルールを、師のドクター・ラーチに叩きこまれる。ドクター・ラーチはセント・クラウズ孤児院の創始者。赤ん坊を分娩させる(deliver)産科医であり、同時に母親を救う(deliver)堕胎医でもある。堕胎に自分を「役立てる」ことへの反発と、堕胎医として「人の役に立つ」ことの桎梏に引きさかれるホーマーのディレンマが、そのままこの作品の投げかける問いかけとなっている。堕胎を描くことで人間の社会と歴史を捉えた、J・アーヴィングの最新長篇。