粛清

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  • サイズ B6判/ページ数 403p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784152092724
  • NDC分類 993.61
  • Cコード C0097

内容説明

エストニアの小村に暮らすアリーダは、ソビエト統治時代の行ないのせいで近隣からいやがらせを受けながらも、家族の土地を守りながら細々と生活している。ある朝、彼女は家の庭に見知らぬ若い女が倒れているのを発見する。またいやがらせ?あるいは、最近流行りの盗賊の一味?悩みながらも、アリーダは衰弱している女を家にあげてしまう。その女はエストニア語を話すロシア人で、名前をザラといった。誰かから逃げているようだが、理由ははっきりしない。行動も奇矯だった。だが、孤独なアリーダは、ザラを家に匿うことに決める。―激動の歴史に翻弄されたふたりの女の邂逅を描く、フィンランドの新鋭作家の代表作

著者等紹介

オクサネン,ソフィ[オクサネン,ソフィ][Oksanen,Sofi]
1977年生まれ。小説家、脚本家。フィンランド人の父とエストニア人の母を持つ。ユヴァスキュラ大学とヘルシンキ大学で文学を学んだ後、フィンランド・シアター・アカデミーにて演劇を学ぶ。2008年発表の『粛清』で、フィンランドでベストセラー第1位を記録するや、世界各国から注目を浴び、現在、41カ国に版権が売れている。フィンランドでは、同国最高峰のフィンランディア文学賞、北欧地域で北欧理事会文学賞、加えて、2007年にEUが新設したヨーロピアン・ブック・プライズ、さらにはフランスのフェミナ賞外国語小説賞、フナック賞にそれぞれ輝いている

上野元美[ウエノモトミ]
英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

75
バルト三国の中で最も北にあるエストニア。ソ連崩壊の1991年に独立するまで、この国はスウェーデン人、ドイツ人、ロシア人の戦争に巻き込まれ、「同じものにしろ、別のものにしろ、新しい長靴でやってきて、そのたびにエストニア人のうなじを踏みつけ」、侵略と略奪を受けてきた。本書の主人公エストニア人のアリーダも、その歴史の波に呑み込まれ、翻弄されてきた女性だ。ロシア人と結婚し一軒の家と土地を守ってきたが、いまはひとり暮らしである。その彼女の家の庭に行き倒れとなったザラと名乗る娘を発見するところから、この謎解きのような2017/10/19

キキハル

35
エストニア。地図上でも遠く興味も関心も薄い国。ドイツと旧ソ連に占領された歴史の中、したたかに生き抜いてきた老女アリーダと、行き倒れの若い女性ザラをめぐる物語である。過去と現在を交錯させて描かれる二人の歴史。姉妹の確執と愛憎はアリーダの内で凝り、姉の夫ハンスに対する執着とともに解けることはなかったのだが。取り調べという名の暴力はこの国に限ったことではないが、権力の前に蹂躙される人権はハエほどの価値しかないのが悔しい。ザラと出会ったことで、アリーダの心の重荷が軽くなったのだと思いたい。乾いた読み心地の一冊。2012/06/24

藤月はな(灯れ松明の火)

31
ソ連統治時のエストニアで共産党員として周囲を搾取してきたがために孤立したアリーダ。男共の金と欲望によって性的搾取をされてきたザラ。二人の女性が出会ったのはある意味、必然だった。大義や善悪を超えても共通する「生きたい」という願い。それにしても『孤島の鬼』の諸戸氏を彷彿とさせるアリーダのハンスへの報われない献身が切ない。それに比べてハンスの言い分に腹が立つ。最後に分かる、アリーダが自身をハエと重ね合わせたり、リンダがソ連になされたこと、そして叔母であるアリーダの存在を否定する理由に遣る瀬無さが込み上げてくる。2015/07/31

Homo Rudolfensis

23
hiroizmさんのレビューから。正直、あまり好みではなかったんですが、それでも最後まで読んでしまったあたりかなり面白い作品でした。基本軸であるアリーダから見たエストニアの小村から、頻繁に視点や時間等いきなり変わるのですが、そうしたエピソードを挟むタイミングがどれも自然なのが凄すぎると思います。それに、これは私がほとんど純文学を読まないから、というのもあるかもしれませんが、文章表現が凄くリアルだなと。マルティンについてが印象に残っていますがどうしたらこんな表現が思いつくの?というものばっかりでした。2021/11/23

hiroizm

20
スゴイもの読んだなあ、と読後しばらく放心状態。90年代初めのエストニアの農村、庭先に倒れていた若い女性と彼女を助けた農家の老女。なにか裏にありそうな二人の視点で交互に進行する探り合いのサスペンス風物語が、第二次大戦、旧ソ連との併合、ソ連崩壊後の混乱期、歴史的運命に翻弄された女性達の苦悩に満ちた凄惨かつ壮絶なサバイバル物語が明らかになる展開に仕事への集中力削られ大変なことに。こんな物語どうやって思いつくねん。これを30代そこそこで書いたオクサネン、マジ恐るべし。2021/02/06

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