内容説明
ホットプルームの活性化による海底隆起で、多くの陸地が水没した25世紀。未曾有の危機と混乱を乗り越えた人類は、再び繁栄を謳歌していた。陸上民は残された土地と海上都市で高度な情報社会を維持し、海上民は海洋域で「魚舟」と呼ばれる生物船を駆り生活する。陸の国家連合と海上社会との確執が次第に深まる中、日本政府の外交官・青澄誠司は、アジア海域での政府と海上民との対立を解消すべく、海上民の女性長・ツキソメと会談する。両者はお互いの立場を理解し合うが、政府官僚同士の諍いや各国家連合の思惑が、障壁となってふたりの前に立ち塞がる。同じ頃、「国際環境研究連合」はこの星が再度人類に与える過酷な試練の予兆を掴み、極秘計画を発案した―。最新の地球惑星科学をベースに、地球と人類の運命を真正面から描く、黙示録的海洋SF巨篇。
著者等紹介
上田早夕里[ウエダサユリ]
兵庫県生まれ。『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、同作でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
射手座の天使あきちゃん
196
DNA情報を操作し新しい種を誕生させ、補助脳を使いアシスタント知性体と会話する知的生物としての人間 片や地球が滅びようとも国や人種や個人のエゴを優先させ醜い争いを繰り返す愚かな生き物たる人間 人間とは? 生きるとは? この物語には哲学が溢れていますね ページ数にひるみそうになりますが「負けずに読めよ 君の未来はこの本の中にある!」(笑) 2013/12/07
文庫フリーク@灯れ松明の火
170
原型の『魚舟・獣舟』は僅か27ページ。多くの陸地が水没し、生存の為の環境適応‐倫理規定を破棄した科学的生命操作で生み出された海上民と〈朋〉の魚舟・そして獣舟。よもや2段組・約600ページの大作に大化けするとは。読み応え有り過ぎて胃が痛むほど。SFは不得手なので何度巻頭の〔地球の内部構造図〕見返したことか。それでも不満は残る。内容を考えれば、これでもまだ短すぎる。魅力的なキャラ含め、さらに深く書き込めるはず。『ローダン』『グイン』シリーズ抱える早川書房さんならば『魚舟・獣舟』シリーズとしての展開は→続く2012/09/28
takaC
129
The Ocean Chronicles 面白かった。「これぞ読書」の醍醐味あり。今年のベスト候補。2012/12/30
修一郎
127
文さんありがとうございました,どえらい面白かったです。2段組みの588ページで取ったメモの長さは歴代最長。スケールのでかさは半端ない。実学説に基づくホットプルーム地殻変動というおカタイ話と朋なる魚舟との共存生活という読者にもめいっぱいの想像力を要求する世界観だ。ストーリー的には派手な戦闘シーンはなく,地道なスタディに基づく官僚たちの交渉が主体で,青澄という確固たる倫理観を持った人間を描くドラマになっている。舞台は思いっきりSFなんだけど,この塩梅が実によかった。 2015/04/05
ちはや@灯れ松明の火
124
やがて滅びゆく我々のために何を為すことができるのか。母なる海が呑み込んだ大地、僅かに残された陸で、寄る辺なき大洋で、道は分かたれながらも其々に朋を得て人は歩んできた。陸上民と海上民、魚舟と獣舟。己が生きるために、かつて同じものだった存在を駆逐することが正しいのか。地の奥底に蹲る灼熱の竜が目覚めようとしている。やがてその背の上で諍う者たちを全て振り落とさんと浅くまどろむ。与えられた猶予の時間、生き続けていくために為すべきは何か。青く澄んだ空や海を失おうとも、人は生命の限りこの星に生き抜いてきた証を刻み込む。2012/09/22