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ハヤカワepiブック・プラネット
バーチウッド

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  • サイズ B6判/ページ数 262p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784152088376
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

優雅な屋敷だったバーチウッドは、諍いを愛すゴドキン一族のせいで、狂気の館に様変わりした。一族の生き残りガブリエルは、今や荒廃した屋敷で一人、記憶の断片のなかを彷徨う。冷酷な父、正気でない母、爆死した祖母との生活。そして、サーカス団と共に各地を巡り、生き別れた双子の妹を探した自らの旅路のことを。やがて彼の追想は、一族の秘密に辿りつくが…。幻惑的な語りの技と、絶妙なブラック・ユーモアで綴る、アイルランドへの哀歌。作家・佐藤亜紀の華麗なる翻訳で贈るブッカー賞作家の野心的傑作。

著者等紹介

バンヴィル,ジョン[バンヴィル,ジョン][Banville,John]
1945年生まれ。アイルランドを代表する作家、評論家。英語圏を代表する文章家として名高い。出身地のウェクスフォードで大学を卒業後、ダブリンの航空会社エアリンガスに就職した。数年のアメリカ暮らしを経て故郷に戻ると、「アイリッシュ・タイムズ」「アイリッシュ・プレス」文化部デスクとして活躍し、多くの書評を執筆する。1970年に短篇集Long Lankinでデビューを飾り、翌年から処女長篇Nightspawn、第二長篇『バーチウッド』を次次と発表し、作家としての地位を確立した。2005年にはThe Seaでブッカー賞を受賞。その後も、ベンジャミン・ブラック名義でミステリを発表するなど、精力的に活動している。1990年より執筆している「ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス」での書評記事も著名である

佐藤亜紀[サトウアキ]
成城大学大学院修士課程(西洋美術史専攻)修了、作家、評論家

岡崎淳子[オカザキアツコ]
明治大学文学部文学科卒、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kasim

33
ビッグハウス・ノヴェルのポストモダン型で可もなく不可もなく、と思いつつ8割がた読んだところで、次第に変調が来て最後はすごかった。落魄する名家の奇矯な家族を描いた前半と、幻想交じりなのにアイルランドの現実が立ち現れてくる後半の旅の対照。伏線を緻密に張ってある家族の秘密は最後に手品の種明かしのように整然と説明される。語り手の推論に過ぎないという断りはあっても、その合理性はバンヴィルが後年ミステリー作家としても活躍するのを予感させる。でも真骨頂はサーカスの存在のように説明しきれない部分だろう。2021/10/07

藤月はな(灯れ松明の火)

23
デカルト的序文で始まる、アイルランドの、とある一族の盛衰記。しかし、ゴドキン家=家族愛がなく、悪意と燃え盛る闘争心が増し増しなアダムス・ファミリーで、マーサ叔母さん=フェスター伯父さんにしか思えてならない・・・。フリークス達とのサーカスの人々の野卑と狡猾な厳しさの裏にあった優しさが泣ける一方でゴドキン家の秘密は予想通り。でもゴドキン家の一族でもあり、人間でもある主人公の語りから信用性はあるのだろうか?これを焦点に当てると第一部の再読でバーチウッドの正体と浮かび上がる事実に静かな二重の戦慄に見舞われる。2016/04/11

三柴ゆよし

21
優雅な文章に隠された物語の真実が再読によって露わにされる超技巧的な小説。とはいえ、過去とは記憶の断片に過ぎないと語る男の語りが、一体どれほど信頼できるだろう。頽廃と狂気に彩られたバーチウッド屋敷を覆う黒いヴェールは、物語のクライマックスにおいて唐突に暴かれたかにみえるが、それもまた語り手の妄想と執念の産物に過ぎぬのかもしれず、要するに断片としての記憶はたしかなものであっても、それを再構成するのが語り手その人であるほかないのであってみれば、つなぎあわされた物語は、あくまで物語以上のものでは決してないはずだ。2012/08/19

ホレイシア

9
遂に読んでしまった(笑)。まさに佐藤亜紀氏が訳すために存在した作品。読みながら何度も自分に彼女の作品ではないと言い聞かせなければならなかった。そういえば、この人の訳が好きというのはあっても、好きな作家が翻訳したものというのは初めてかも。言葉の選び方一つ一つがストライク。だからかえって他の訳でのバンヴィル作品を読むかどうかは考えてしまう。それほど佐藤亜紀でした♪。2010/08/10

ネムル

9
『海に帰る日』を読んだときも思ったが、バンヴィルの文章は流麗すぎて「心地よい」を一歩越えてしまう。本作も佐藤亜紀による翻訳ということで、幻惑必至の濃密な作品になっている。この美しくも、なかなか正体を掴ませない断片化した記憶の語りがミステリ的な超絶技巧の結末を迎え、とにかく唸る。もっとバンヴィル訳してくれ!2009/04/02

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