内容説明
2006年1月13日、金融庁、消費者金融業界に衝撃が走った。グレーゾーン金利(利息制限法の規定を超える金利。長年容認されてきた)の有効性を、最高裁が否定したのだ。金融庁の大森泰人参事官らはこれを機にグレーゾーンの撤廃、上限金利の引き下げを目指し密かに工作をはじめる。経済的困窮による自殺、自己破産は急増しており、多重債務問題には歯止めが必要だった。現行金利の上であぐらをかいてきた業界はもちろん徹底抗戦を開始。やがては与野党の政治家、外資、マスコミを巻き込んだ大乱闘に発展してゆく―アイフルへの処分、アメリカの圧力、後藤田政務官辞任、大荒れの自民党合同会議の裏側を徹底取材。貸金業法成立までの激動の300日全記録。
目次
序章 激震の予兆
第1章 衝撃の判決(否定されたグレーゾーン;法律の宇宙に浮かぶ男 ほか)
第2章 攻防激化(忍び寄る引き下げ論;「サラ金と一緒の広告は不愉快」 ほか)
第3章 外資参戦(暗躍するシティ・GE;「お客様が勝つんですよ」 ほか)
第4章 誤算(秘めた決意;大蔵DNA ほか)
第5章 サラ金崩壊(新しい世界;大リストラ ほか)
著者等紹介
井手壮平[イデソウヘイ]
慶應義塾大学総合政策学部卒。共同通信社記者・金融庁担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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natsu61
2
利息29%時代の崩壊というより強行ブレイクスルードキュメント。利害と哲学と商売と政治の狭間で戦ったものたちの記録。でもいまだ戦いは終わっていない感じ。2009/06/11
zip-bear
1
本屋で見つけて「おっ」と手に取る類の本ではない(私も薦められてだ)し、すでに絶版だが、中身は濃い。ノンフィクションだが、人間ドラマをよくぞこれだけ取材して、読ませる仕立てにまとめてくれたと感服。法の「グレーゾーン」が長年放置された結果、そこに育った消費者金融業界。多重債務という社会問題が発生している一方で、業界がここまで大きくなると法改正も容易ではなく…(官僚vs業界の両サイドに議員が付き、外圧も加わったバトル勃発)。圧力で歪む法案をあの手この手で押し返す。読後は、法律という乾いた文章に血が通って見える。2019/05/02
tanigchi
1
ゼミの発表のため参考に読んだ一冊。貸金業に関する法改正がいかに大きなものであったかが感じられた。政府、金融庁、業界それぞれの主張が交錯していて読んでいて面白かった。最終的に出資法上限金利引き下げによるグレーゾーン金利の撤廃に踏み切ったことは、個人的にはよかったことだと思う。2014/10/16