ハヤカワepiブック・プラネット
カブールの燕たち

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 182p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784152087973
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

内容説明

タリバンに統治されたアフガニスタンの首都カブールは、まさにこの世の地獄。廃墟と化した町では私刑が横行し、人心は荒廃していた。拘置所の看守アティクの心もまた荒みきっていた。仕事で神経を病み、妻は重い病に冒されている。友人は離縁を勧めるが、命の恩人である妻を棄てることは…。だがやがて、アティクは夫殺しで死刑を宣告された美しい女囚に一目惚れしてしまう。女を救おうと走りまわり、憔悴していくアティクを見て、彼の妻は驚くべき提案をするのだった。壮絶なる夫婦愛を描いた衝撃作。

著者等紹介

カドラ,ヤスミナ[カドラ,ヤスミナ][Khadra,Yasmina]
1955年生まれ。本名、ムハマド・ムルセフール。アルジェリア軍の将校時代、軍の検閲を逃れるため女性名のペンネームで執筆活動をはじめ、文学、ミステリと幅広いジャンルで次々と話題作を発表した。イスラムの声を伝える作家として、国際的に高い評価を得、作品は25カ国で翻訳されたが、2001年に自伝を発表しフランスに亡命するまでその正体は不明だった。2002年発表の『カブールの燕たち』は紛争地域を舞台にした3部作の第1弾にあたり、“サンフランシスコ・クロニクル”ブック・オブ・ザ・イヤーに選出、ダブリン国際文学賞の最終候補にもなった

香川由利子[カガワユリコ]
1954年生、京都大学大学院修士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

どんぐり

98
1990年代後半、イスラム原理主義組織タリバンの支配下に置かれたカブールで、鞭が公用語になるまで蹂躙された市民の日常に、お祭り騒ぎの公開処刑が行われていた。20年前のこととはいえ、この恐怖政治がアフガニスタンに再来するかと思うと、ぞっとする。物語は、刑務所から死刑執行人に引き渡された女性が石打ちの刑に処せられる場面から始まる。登場人物は二組の夫婦。一人は病身の妻がいて、女囚を監視し死刑執行人に引き渡す拘置所の看守。もう一人は美人の妻がいて、石打ちの刑を軽蔑しながらも女囚に石を投げてしまったインテリの男。→2021/09/06

nobi

87
爆撃で廃墟と化しタリバン支配下、笑いの消えた街カブール。『千の輝く太陽(ホッセイニ)』で、取り巻く虚しさと男性優位に刃向かったのは二人の妻だった。『カブールの燕たち』も意気阻喪する夫達に対して覚悟を決めるのは二人の妻。説明口調の会話に馴染めず、偶然の重なりも女性の品格も少し出来過ぎと感じながら、荒涼とした地になおも生み出される物語に奇蹟のような輝きに心震えた。男性という性(さが)の行き詰まりをしなやかに打開するのは女性という性。イスラムの作家達の心性は聖母マリアを生み出した心性に通じているのかも知れない。2018/02/10

ちえ

45
過激なイスラム原理主義者集団タリバンが支配するアフガニスタン首都カブール。恐怖政治の中で生き延びるため感覚を麻痺させられる人々。心を病む拘置所の看守アティクと重い病にかかっている妻ムサラト、タリバン支配下で仕事を失っているブルジョア出身のモフセンと名士の娘で元司法官のズナイラ、という二組の夫婦。読みながらだんだん女性(特にムサラト)の強さに比べ男性(二人以外にも)の身勝手さ、情けなさに腹が立ってくる。それにしてもイスラムの愛とはこれほど自己犠牲的なものなのか…。最後の場面、予想できたがあまりにも無残だ。↓2020/12/26

mt

35
舞台はタリパンの支配下に置かれたカブール。町は破壊され人心は暗く、陰鬱な空気が充満する。笑わない人々、強制される祈り、自由を奪われた民衆が熱くなるのは非情な公開処刑のみ。世界大戦も終わった今もなお、世界各地で市民が犠牲になる愚行が横行していることを改めて知らされる。精神を病む夫が愛した死刑囚の身代りになる妻の狂気の奇策と、それさえ報われない夫婦愛が痛ましい。クッツェーが絶讚する著者ヤスミナ・カドラが女性を名乗り身を隠しながら書いた作品には、穏やかに語りかけるような優しさと、信念の人と知れる強さが共存する。2015/10/16

南雲吾朗

31
イスラムの教えを都合の良い方向に捻じ曲げて恐怖で統治するタリバン支配下のカブールでの物語。理不尽な死が蔓延する街で人々は恐怖の中で生きている。その人々の中のうち憔悴しきった二組の夫婦をめぐるそれぞれの出来事や思いを描いている。後半部分で、ちょっとだけ良い話があったが、しかし結局は、本当に救いがない物語だなぁ…。物語の中盤のちょっと後辺り(P.106)のカシムがアティックに話して聞かせる人生観が好きである。イスラム原理主義を描く3部作の一つ目。ほかの作品を読む必要がありそうだ。2018/03/27

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/531024
  • ご注意事項

最近チェックした商品