内容説明
言語を速習できる特殊な学習法の普及は、独自の言語を設計する言語デザイナーという職業を生みだすほどの人工言語ブームをまきおこしていた。言語デザイナーの主人公は、奇妙な偶然から、これまでのものとはまったく構造の異なる言語に遭遇する。欠陥品なのか、それとも…？言語理解と人間の認識能力、そしてその未来を描いて第１７回「ハヤカワ・ＳＦコンテスト」に入選した表題作「夢の樹が接げたなら」をはじめとして、緻密な世界観に裏づけられた、名品８篇を収録する作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みさどん
17
機械の力が大きくなった未来世界が描かれる。様々な短編集で、筆者の想像力が凄かった。強烈だったのは、人類の電子マネーがみな誤作動で無限大になってしまうというもの。生活物流は崩壊するのだ。みんなが大金持ちになれば、誰も働かないという・・。人が苦しむ終わり方が多くて、文明が発達し過ぎると、未来は明るくなくなっていくのかもしれないと思わされる。ブレードランナー的って本当かも。2017/02/01
ゆき
6
★★★★☆：SF短編集。一つ一つの作品が長編として読んでみたくなるような奥行きのある世界観を持っていて、作者の引き出しの多さに感心した。どちらかというとダークだったりビターだったりする展開が多いが、ある人工言語の発明が人類の進化を予感させる表題作や、電子マネーシステムの崩壊から変化する社会を描いた「無限のコイン」が特に面白かった。2017/09/03
楽市
3
表題作もいいが「スパイス」にやられた……。うん、他人には勧められないが私は大好きです。以下ネタばれるよ。 カニバリズムは愛の究極形、って言ったのは誰だったか。ただ、欲しかったのが「人権」っていうのはしっくりこなかった。希望、を持たせてこそ、そこから絶望に落ちる時が素晴らしい、的な展開だと思っていたんだが。 愛の反対は無関心、ね、この話で一番ゾッとするべきなのはやはり「映像」を流す、という判断をした社会そのものだろう。多分2012/02/26
みずけろ
2
星界シリーズに手を出す前に短編集にチャレンジ。おお、SFの良品が詰まった短編集という感じ。表題作とズークが好き。言語の面白さがすごく分かる。スパイスはさすがに、うへえとなりました。2016/11/27
猫のゆり
2
イーガン『ＴＡＰ』の解説で言及されていたので読んだのですが、表題作はもちろん、収録されている8篇の短篇どれもがすばらしく、大満足でした。特に「スパイス」と「ズーク」が印象的でした。2009/02/25
