内容説明
アガサ・クリスティーは多くの傑作ミステリを書くかたわら、一冊の小さな宝石のような本を残しました。聖書に題材をとった物語と詩を集めたクリスマスブックです。人間の心理についての鋭い観察力と卓越したストーリーテリングが作り上げた小宇宙は、ミステリに劣らぬ驚きと優しいさわやかな感動に満ちています。
著者等紹介
クリスティー,アガサ[クリスティー,アガサ][Christie,Agatha]
1890年、保養地として有名なイギリスのデヴォン州トーキーに生まれる。1914年に24歳でイギリス航空隊のアーチボルド・クリスティーと結婚し、1920年には長篇『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビュー。1926年には謎の失踪を遂げる。様々な臆測が飛び交うが、10日後に発見された。1928年にアーチボルドと離婚し、1930年に考古学者のマックス・マローワンに出会い、嵐のようなロマンスののち結婚した。1976年に亡くなるまで、長篇、短篇、戯曲など、その作品群は100以上にのぼる。現在も全世界の読者に愛読されており、その功績をたたえて大英帝国勲章が授与されている
中村能三[ナカムラヨシミ]
1903年生、英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mii22.
73
聖書に題材をとった短篇、掌篇、詩を集めた小さなクリスマス本。ミステリでないアガサ・クリスティも人間の心理を深くえぐるような切れ味のよい物語で面白い。お気に入りは「水上バス」。主人公の女性の心情が自分と重なり心を乱される。愛し方が不器用でいつも自分に自信が持てない彼女が水上バスでのあることがきっかけで気持ちが変わる様子は万華鏡をカチリと回した時視界が変化する時の驚きと高揚感に似てはっとする。初読のときはラストに置いてけぼりをくらったけれど、意味が分かればそのオチのセンスとウイットに思わずにんまりしてしまう。2020/12/09
しゅてふぁん
59
『クリスマスにはクリスティーを』ということでパラパラと読む。最近ちょっぴり聖書を齧ったので少しは違った読み方ができるかなと期待しつつ…。なんと以前読んだ時よりも、言葉の意味とかどの場面かとかがわかる!色々と想像できて嬉しい。何となくでも‘知っている’って違うんだなぁと実感できた読書タイムだった。2019/12/25
キムチ27
59
巻末にもあるけれど、人間の心理は永久の謎、そして面白い。仕事をしていても自身も、他者にもモチベーションで振り回されることが多々ある。クリスティが人間の心の中をさりげなく、かつ劇的に詳述する好手であるのは判りすぎた事実。偶然に評者が挙げている作品の代表は「春にして君と離れ」、「ホロ―荘の殺人」そして「パーカーパイン登場」・・お!キリスト教、そしてクリスマスにまつわる短編が納められ、幾度も読み返したいお話がゾロリ。「水上バス」が一番ジンと染みた。救難聖人14人・・少し興味を抱いた。ベツレムの星と言えば。。 2019/06/09
mii22.
57
なんとなく「水上バス」が読みたくなって。日々の暮らしのなかで多くの(気づき)があるけれど、いつの間にかその新鮮な気持ちが薄れ忘れてしまうこともある。なんだかなぁと心が曇った時、この短編を思い出す。一年に一度読み返すのもいいものだ。彼女が水上バスに乗ったように私もこの一篇を読む。2021/12/05
雪紫
56
「クリスマスにクリスティーを」。なんか、凄く良いフレーズよねこれ読むと。聖書詳しくないから註釈あってもわかんない話あるけど、それでも言える。表題作と「水上バス」良かった。と(思わず「水上バス」は読み返すレベルだった)。2021/04/11