内容説明
八年間だれとも口をきかず、養護施設の机の下で怯える十五歳の少年ケヴィン。恐怖心が爆発すると、周囲も自分も傷つけ暴れまわり、トリイは心底恐ろしいと感じることがあった。ふたりで机の下にもぐって努力を重ねたすえ、ついにケヴィンは言葉を発し、すべてが快方に向かったかと思われた。だが、ある日ケヴィンは世にもおぞましい絵を描く。彼の心に巣くうのは何なのか?怒りと憎しみの塊となった少年の再生への道を描く問題作。
著者等紹介
ヘイデン,トリイ[ヘイデン,トリイ][Hayden,Torey]
1951年5月21日、米国モンタナ州生まれ。情緒障害児教室や福祉施設などでの体験をもとに『シーラという子』をはじめ数々のノンフィクションを著し、世界中に大きな感動を巻き起こしている。スコットランドで執筆活動のかたわら農業を営み、児童心理学の研究も続けているほか、児童虐待や自殺の防止ホットラインの活動にも力を尽くしている。1998年以来、度々日本を訪れている
入江真佐子[イリエマサコ]
国際基督教大学教養学部卒、英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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Rin
27
【再読】今回は今までよりも年齢が上の子ども。話す事をせず、恐怖に囚われて。愛された事もなく、福祉や行政の手からもこぼれ落ちて、彼の過去はファイルには殆ど記されていない。そんな彼と向き合って愛して、抱きしめてあげるトリイに最後は心が揺さぶられる。私自身、諦めずにもっとチャレンジして模索して進まないとと思わされる。ケヴィンの過去は壮絶で憎しみや恐怖に雁字搦めになって、「頭がおかしい方がいいんだよ」という言葉が悲しすぎる。それでも自分で過去と決別できた彼の未来には幸せや自分で作る家族があって欲しいと祈りたい。2015/05/30
ヒラP@ehon.gohon
14
妹を義父に虐待死された少年の憎悪と、仇討ち願望。屈折して閉じ籠ってしまった心と対峙するトリイの息詰まるような療法に圧倒されました。何度もの挫折に、暗い最終章を予測してしまったのですが、それを乗り越えたケヴィンには拍手を、苦難に打ち勝ったトリイの献身に限り無い賞賛を贈ります。2016/07/27
yos
6
裏切られても傷つけられても、見捨てずあきらめず、ねばり強くケヴィンとかかわりつづけたトリイに感動します。何度問題行動を起こしても、どこへ連れていかれても、トリイが助けに来てくれることを心のどこかで信じていたケヴィン。人と人とのつながりや、相手を信じること、かかわりつづけることの大切さに心打たれます。2005/11/22
こやま
4
毎回の事だけど、どの子供たちも応援したくなります。ケヴィンやチャリティーはトリイによって救われた。でも、トリイにも救えなかった子は沢山いると思う。でも、やらなかったら、救えた子もいない。それがトリイの凄いところだと思う。2012/03/11
shokokot
3
大人のしたことで、傷つき どうしようもなく心を病んでしまう子供が本当にたくさんいるのだと改めて考えさせられた。 トリイのHPにてケヴィンのその後を知り、ほっとした思い。2015/02/12