感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
295
★★★☆☆ 19世紀に書かれた心理的密室トリックの元祖的な作品。なお、カーの密室講義(三つの棺)でも本作に言及されている。 200ページ程度と短いが、古い作品なので読みにくい部分もありサクッと読めるわけではない。 ユーモアあふれる筆致で、ラストもブラックジョーク的な趣があった。 作中で法廷シーンが描かれるが、この程度の証拠で死刑判決とは恐ろしい時代だ… 犯人は多くの人が1番最初に予想するであろう人物だろうが、犯人なら絶対取らないであろう行動をしたことから外した。これは元祖パズラーともいえるな。 2022/07/29
セウテス
92
〔再読〕ポー氏の「モルグ街の殺人」に次いで書かれた1891年の古典、後世に密室の可能性を示した作品。として知識は持っていたのですが、初読みは1980年代とかなり遅くでした。鍵のかかった部屋の中、返事が無い事を不審に思った下宿の女主人と元刑事が鍵を壊して入ると、部屋の主は喉を切られて死んでいた。密室の謎も今となっては、様々な作品で使われており解りやすいのですが、密室トリックのある型式の元祖であり、当時の驚きが解るというものだ。探偵不在の謎解きとして、スッキリとした結末を導き出している事も見事な作品だと思う。2019/05/23
里愛乍
53
有栖川有栖氏のお墨付き「世界初の密室トリック小説」とある帯に釣られて購入。あとがきによりますと、本書は1891年の作品でして、しかもザングウィルの探偵小説はこの一作しかないということです。なるほどこれに似た犯人像は何作か見受けられますがこれが元祖だったんですね。会話文など面白く、読み返してみれば、彼の人となりも見えるような…古典ではありますが、かえって新鮮な気持ちで読めました。2017/01/16
のせ*まり
32
芥川の『藪の中』を彷彿とさせる心理サスペンス。古典ミステリだけどさらっと読めました。それぞれのキャラクターが生き生きとしていてユーモアに溢れていて面白かったです。 やっぱりイギリスいいなぁ。。霧の町イギリスに行きたくなりました。 イギリスではクリスマスの時期にミステリーを読むらしいのでクリスマスの時には読み終わりたかったのですが、他所ごとに夢中で読書をサボってしまった、、、せっかくなので、1月はミステリーフェアにしようかなー。2018/01/04
そうたそ
30
★★★☆☆ 「元祖密室トリック」と言うべき作品であるらしく手に取った次第。現代では数々の類似トリックが生み出されているし、本書のトリックを向上させているが故に、真相に行き着いても「なんだそんなものか」と思ってしまうのは致し方ないが、当時の読者はさぞかし驚いたことだろう。ただ本書の魅力はそのトリックの意外性だけではない。ミステリに似つかわしくないユーモアをもって進められるストーリーこそが現代となっては本書の一番の魅力といえよう。そのストーリーの魅力こそが、本書が現代でも色褪せぬ所以ではないかと思う。2017/07/19