内容説明
休暇をすごすため、イタリア周遊ツアーに参加したスコットランド・ヤードの名警部コックリル。だが、事件が彼を放っておかなかった。景勝で知られる孤島で一行のひとりが何者かに殺された。地元警察の捜査に不安を感じたコックリルは自ら調査に乗り出すが、容疑者であるツアーの面々は、女性推理作家やデザイナー、隻腕の元ピアニストなど一癖ある連中ばかり…ミステリ史上に輝く大胆なトリックで名高い、著者の代表作。
著者等紹介
ブランド,クリスチアナ[ブランド,クリスチアナ][Brand,Christianna]
1907年マレーシア生まれ、インド育ち。30年代の黄金時代を正統に継承するパズラーとして知られる。高度な叙述の技巧、どんでん返しの連続、意外な結末に定評がある。代表作は、『緑は危険』『はなれわざ』など。85年没
宇野利泰[ウノトシヤス]
1909年生、1932年東京大学独文科卒、1997年没、英米文学翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
63
コックリル警部シリーズ第6弾。〔再読〕イタリアをツアー旅行中のコックリル警部が、地中海の孤島で事件に巻き込まれる。警部とガイドら8人はホテルのビーチで過ごしていたが、部屋へ戻った女性が刺殺され見つかる。クローズドサークル内で起こった不可能犯罪、一癖も二癖もある6人の容疑者、あらゆる可能性の仮説や推理と読み応えある構成です。しかし驚くべきは、読者の前に真相を配置してあるにも関わらず、それに気づかせない技巧の素晴らしさです。古畑任三郎など幾つもの作品が頭に浮かびますが、ブランドならではの鮮やかは一味違います。2017/07/01
背古巣
43
タイトル縛りの本選び【2023年5月は“ひらがなのみ”】え!?え!?何?この真相!真相がわかった段階で、ずっと前に読んだ「シンデレラの罠」を思い出しました。読み始めは、なかなか事件が起きない。翻訳ものってこんなに読みづらかったかと思う読書だったけど、最後の最後でやられました。なるほど「はなれわざ」ですね。解説を恩田陸さんが書かれているのにもびっくりです。面白いというより、その真相に本当にびっくりしました。読み終える前にレビューの下書きを準備していたのですが、久しぶりにそれがぶっ飛びました(^o^)。2023/05/14
星落秋風五丈原
35
誰を取っても怪しげな容疑者達に加えてコックリルを悩ませるのは、殺人現場が勝手知ったるイギリスではなく「郷に入っては郷に従え」の異国。地元の警察所長は密輸団の元締めも兼ねており、鑑識や裏づけなどとは一切縁のない捜査を進める。犯罪が起きたら誰かを適当に逮捕して、必要なら証人をでっちあげ、死刑にしてしまうサン・ホアン流の事件解決法はぞっとする。スコットランド・ヤードの看板が物を言い、やっとコックリルが捜査に加えてもらえるが、そんな彼がいい加減だと思っていた地元警察に眼を開かれるようなシーンがあって笑わせる。2017/01/19
藤月はな(灯れ松明の火)
25
近所の図書館で「恩田陸、絶賛」という帯とあとがき(このあとがきは「小説以外」でも読めます)、この作品がこの作者の最高傑作だと「緑は危険」のあとがきで読んだので借りました。今回はコックリルはしっかり、探偵を行っていました。私としては「自己憐憫と誰かが何とかしてくれるのが当然だと思っているレオのどこがいいのだろうか?」と思いました。しかし、ヘレンの謙虚を装った傲慢さなども大概ですが。最後まで気が抜けないどんでん返し。でも犯人をそんな一言で片づけてもいいのか、コックリル。そう思うのは時代ゆえか。2012/11/22
Ribes triste
15
コックリル警部シリーズ。イタリアのツアー旅行中に起こった殺人事件。科学捜査もできない、証拠品もない。果たして犯人を捕まえことが出来るのか。人間の裏側の醜い部分を赤裸々にあばきだす、ブランドの筆致は見事。トリックに思うところはあるけれど、やっぱり面白かった。2018/07/26