内容説明
思考に可能な限りの高みに達する威力ゆえ「科学の女王」と称揚される数学は、一方で先端科学の解決手段として利用される「奴隷」である。この一見矛盾する性質こそは、研究者を魅了する理由にほかならない。名数学史『数学をつくった人びと』の著者が、数学上重要なアイデアの面白さと、それがどう科学へ応用されたかについて、その発明者たちのエピソードを交えつつ綴ったもうひとつの数学史。
目次
第1章 さまざまな視点
第2章 数学的真理
第3章 束縛を破る
第4章 “同じであるが、同じでない”
第5章 抽象術
第6章 大樹も一個の種子から
第7章 絵で考える
第8章 古い道標、新しい道標
第9章 群
第10章 “メトリカル”な宇宙
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
5
ガウスの言葉をタイトルにした本書は、一方で19世紀の応用数学と純粋数学の隆盛が、物理学等の科学への応用を目指してではなく、数学的な「事物の合目的性」や「美の霊感」に導かれたことで可能になったとし、他方で幾何、代数、整数論、解析幾何と微積分学の発展からすれば中途に留まるにせよ、19世紀教育がグラフ表現を浸透させ、子供に至るまで数学を普及した点にも言及する。さらに、ラッセルの完全な抽象性としての数学の定義や非ユークリッド幾何学の発見にもかかわらず、その本質の探求の継続から得られる群や不変式の概念が紹介される。2017/12/24
fseigojp
3
なんとかついていけた2015/07/13
massn
2
めちゃいい本やん!と思ったら、再読だった。自分が怖くなる。2023/12/16
まじぇすた
2
何故か「体」がよく理解できた。束とイデアルが全く分からない。苦手な遠回しな表現があり専門用語やトピックが先の章の参照だったりして非常に読みにくい。でも数学の紹介とその考え方を明快に説明してくれる。がんばって読み終えてみればまあまあ楽しかった。解説にある通り、日本語訳が上手に思える。あと、p.77で紹介されてる E. V. Huntington の論文タイトルは、“Definitions of a Field by Sets of Independent Postulates” が正しい。2017/07/06
農明(ノウミョウ)
1
今まで行列の計算は形式的に理解しようとしていたが、本書を読むことによってどんなからくりがあるのか過程をひとつずつ追っていくことに数学の楽しみを感じることができた。2017/02/12