内容説明
1909年、カナダで5億年前の不思議な化石小動物群が発見された。当初、節足動物と思われたその奇妙奇天烈、妙ちくりんな生きものたちはしかし、既存の分類体系のどこにも収まらず、しかもわれわれが抱く生物進化観に全面的な見直しを迫るものだった…100点以上の珍しい図版を駆使して化石発見と解釈にまつわる緊迫のドラマを再現し、歴史の偶発性と生命の素晴らしさを謳いあげる、進化生物学の旗手グールドの代表作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
229
カンブリアは爆発だっ! ずっといつか読まなきゃ(使命感)と、思ったまま心の積読本になっていましたが、漸く読みました。時が経ってしまってる部分はしょうがなく。冥王代に終止符を打ち、顕生代幕開けです。顕生生物が現れて間も無い事ですから、多様性に乏しいのは致し方ないのかも。然し乍らボディープラン(=門)は出揃っている。異質性には富んでいるのがワンダフル! 軟体性生物をも含むバージェス頁岩と言う地球さんからの贈り物がワンダフル! そしてその造形がワンダフル! なのですかね。地球と言うのは進化の実験場なのかなぁ。2022/11/09
たかしくん。
33
再読ですが、前回はチンプンカンプンでした。今回はこの本の面白さを、相当楽しんだと思います。「アノマリカリス」やら「オパビニア」やら、奇妙奇天烈なバージェス頁岩の動物群とその後のカンブリアの大爆発を通して、更に新しい生物進化の見方を提言したグールドの存在感を感じ取りました。話も面白く、途中で色々と寄り道するところもまたいい!氏の考え方は、現在では一部否定されている面もありますが、それは割り引いてもこの本は「フェルマーの最終定理」に近い面白さを兼ね備えてますね。2015/04/05
かんやん
21
5億数千年前のカンブリア紀の生命の爆発的増加、そこで生まれた奇妙奇天烈な生物たち。しかし、化石の発見者がそれらを節足動物門に分類してしまったのは、なぜなのか。個々の生物を解剖学的に取り上げると、ほとんどが既知の分類をはみ出してしまうのに。そこから、著者はハシゴ段的、逆円錐状の進化観(生命の系統樹に表されるような、単純なものから複雑・多様なものへの進化)の見直しを進めてゆく。優れて適応したものが生き残るのではなく、偶然が支配するランダムな世界。壮大な仮説の是非はともかく、復元された奇妙な生物たちが楽しい。2017/12/16
牧神の午後
18
言わずとしれたカンブリア爆発。表紙を飾っているキングオブキンクなアノマロカリスはエヴァの使途のモティーフの一つにもなっている、異形としか言いようのない生命体。科学の古典本なんで、現在となっては研究が進んで、著者が言うほどの異質性がなくなっていることが後書きでも明かされているけど、それでもこんな奇妙キテレツな生命群が地球から姿を消してしまったのはまるで神様の遊びのような趣。そして種の選択の偶然性に思いをはせると我々がこのようにしてここにいることの不可思議さ、奇跡に胸熱。2014/06/18
roughfractus02
10
古生物学者は古代生物の化石を見て、そこが海だったと推論(アブダクション)する以上の主張を試みる。著者はカナダのバージェス項岩から発見された動物群にカンブリア爆発による生物進化最大の多様性を見出す。本書後半はさらに進化論に浸透する系統漸進説に対し、進化に速度の差異を導入して急激な進化と進化の停滞による断続平衡説を唱える。種に分類不能な生物もいたカンブリア紀には進化史上最高の多様性があり、その後縮減したとする著者の主張は、以後夥しい批判を誘発する。が、この壮大なアブダクションへの批判によって進化論は進歩する。2020/05/07