内容説明
BioGen社が保存するバーネットの細胞株が汚染され、彼自身も姿を消した。同社の依頼を受けた私立探偵は、バーネットの娘と孫から細胞を採取すべく、二人を追う。オウムのジェラールは鳥かごから逃げ出して冒険を繰りひろげ、学校に通い始めたヒューマンジーのデイヴは騒動を巻き起こす。そして、成熟遺伝子を組み込んだ薬を吸ったジョッシュの兄の体に異変が…事実とフィクションを一体化させ、斬新な構成で描く野心作。
著者等紹介
酒井昭伸[サカイアキノブ]
1956年生、1980年早稲田大学政治経済学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ブラックジャケット
12
遺伝子研究という偉大なプロジェクトに参加しているはずが、成功すれば圧倒的先行者利益も期待できる。野心と欲望が研究の純粋さをスポイルする。製薬会社も同様。投資会社は数字のみでモラルはない。弁護士もマスメディアも勝ち組に加担するばかり。著者は豊富なリサーチで、理系エンターテイメントをブラッシュアップさせる。新聞記事やレポートを挿入し、客観的だが、どこかブラックなユーモアを感じさせる。小説的な結末よりも、怒濤の狂騒を繰り広げて、読者を幻惑させた。つきつめれば暗黒の未来図だが、人類の対応力を信じる希望がある。 2023/09/06
Miyako Hongo
12
買った細胞は企業のもの。だったらもう一回採取する権利がある。その細胞のコピーを持つ娘息子の細胞も企業のもの...一体どんな理屈なのかと思うのだが、裁判にいい弁護人がつくだけでそんな理不尽がまかり通っちゃうのがアメリカなんだよな。そして息子をつれて企業の雇った賞金稼ぎから逃げる母がサラ・コナー級に強いのもアメリカ。上巻最後で本当にこれ一本の話にまとまるのかと心配したが、さすがにクライトンは上手くまとめ、因果応報のオチまでつけてくれました。 どこまでを人間と認めるかを考えさせられる話でした。2014/07/06
Sakie
3
遺作にふさわしい1冊。利益や利権を得るために、発言力を持つ人間がもっともらしく語ることによって、"物事のあるべき姿"から外れていく。その危険性を語っている。
いちみ
3
★★★★☆ 複数のエピソードがバラバラに始まる構成はこれまで読んだクライトン作品と同様なのだが、各エピソードが、互いに繋がってゆくようであり、、でも繋がらなかったり。スッキリしない構成かもしれないが、その分、より多くを考えさせられる印象。派手ではないが、力を持った作品と思える。2010/06/19
ikyo_01
3
現実問題として、どんどん研究が進む中、人権や、モラルなんてことは二の次になってしまっているのかな。勿論、正解というものが在るのかどうかも解らないけれども。 研究者は人の役に立ちたいという所から始まっているのだろうと信じたいけれど、企業はやはり投資に見合うものを求め、権利を主張する。 人間の希望、欲望を抑えるのは難しい事でしょうね。 遺伝子研究にからんだ問題、SFではない現実を、私達も知っておくべきなのでしょう。時代はどんどん進んでいる。2010/02/25