内容説明
ウィーンの英国大使館に勤務する情報部員ピムが、忽然と姿を消した。父リックの死を告げる電話を受けた直後の出来事だった。事態を憂慮した情報部は、ただちにチームを派遣、ピム宅でチェコ製の写真複写機を発見する。そのころピムは英国の田舎町にある隠れ家で、これまでの半生を憑かれたように書きしるしていた。彼のペンは一人のスパイの驚くべき人物像を描きだしていく…。自伝的色彩も濃厚な巨匠の集大成的傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
95
一筋縄ではいかないル・カレの作品の中でも飛び切り難解だと称されるのが本書。襟を正す思いで臨んだが確かにこれは難しかった。これまでのル・カレ作品でも時制が現在と回想が混在してしばしば混乱を招いたが、本書では更に拍車をかける。これまで以上に混乱を招く、この取り留めのなさは本書が作者の自伝的小説とされているからだろうか。主人公マグナス・ピムの父親リックは詐欺師であったことが彼の筆によって明かされていくが、その肖像は自身の父親そのままらしい。つまり本書自身が作者にとって父親への鎮魂の書であるように思えるのだ。2023/06/29
バ度ホワイト
15
主人公マグナス・ピムの失踪。それを追う英国情報部上司ジャック。失踪後のピムの行動や回想というか日記かな、生い立ちからいや父親の若い頃から語られるパート。ジャックがピムの妻息子、先妻に話を聞いて回ったりドタバタな情報部のパートが交互に展開する。そのため物語がめちゃくちゃゆっくり進む。序盤、謎が多いしピムの回想もダルい。だが徐々に面白くなる。ピムお前は何者だ?2019/01/26
うめ
4
失踪した英国情報部員ピムが自身の半生を回想する過去と、彼を探すため上司ジャックが関係者の話を聞いてまわる現在とが交互にくる上、登場人物も多くてメモをとりながら読んだのでかなり時間がかかりました。展開はゆっくりですがピムの人生は驚かされることばかりで次第に彼の語りに夢中になっていきました。父の死がピムの行動に与えた影響、失踪の目的、ジャックはピムを探し出すことができるのか、まだまだ謎ばかり。下巻を読むのが楽しみです。2020/04/02
千曲りお
2
読んでも読んでもページが減らない。2020/05/12
Miho Haruke
2
書影がないのが残念。ブックデザインは辰巳四郎氏なのだが、下巻のダークな色調と奇麗な対比を成す色合いなので、古書店や図書館で見かけたら上下見比べてほしい。2013/06/07