ハヤカワ文庫<br> 地図にない町 - ディック幻想短篇集

ハヤカワ文庫
地図にない町 - ディック幻想短篇集

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  • サイズ 文庫判/ページ数 280p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784150401221
  • NDC分類 933

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

367
'50年代前半に書かれたディックの初期短篇12篇を収録。副題には「幻想短篇集」とあるが、むしろ朝鮮戦争さなかのこの時期にあって、米ソ戦に対する恐怖と警鐘が込められた作品が多いようだ。例えば、「森の中の笛吹き」、「超能力者」、「ありえざる星」などがそうだが、「薄明の朝食」は特にそれが顕著な秀作だ。また、自己のアイデンティティと世界との違和を語った「おもちゃの戦争」と「地図にない町」は、ディックのその後を望見させるようで興味深い。もちろん、これらは短篇小説としての完成度も高いのだが。 2018/01/09

sin

68
山椒は小粒で…と言うがまさにディックの短編に当てはまる表現ではないだろうか?その作風はトールテイルズの系譜か?科学界のホラ吹き男爵ラビリンス博士の奇想天外、いや世界大戦の煽りで燻る東西冷戦下米国の世相を感じる不穏で…奇抜な未来予想、作品は五○年代アイデア・ストーリーだがアイデアに流されない深さを感じて止まない、訳者がそのあとがきに翻訳者冥利に尽きると惚れ込んでおられるのも納得である。何より翻訳モノには珍しく読みやすいので是非(笑)2021/12/03

催涙雨

47
日本ではもっとも早くに単行本化された短編集。十二編うち二編既読。ファンタジーやホラーなどの幻想小説に類するショートショート的な気軽さをもつ初期作品が多く収録されているのが特徴。神話や伝承に着想を得たと思われるものが多い。「おもちゃの戦争」=言ってしまえば殺伐としたトイストーリー。子供の柔軟さを利用せんとする玩具と人間の戦いと思いきや、やっぱりタイトル通りというオチ。「森の中の笛吹き」=タイトルや“パイパー”という名前からパイドパイパーから着想を得たことはわかるが、類似点は不明瞭。原住民を欺いて都市化した結2018/10/29

アルビレオ@海峡の街

28
SFあり、ちょっとダークなファンタジーあり。ディックにしては割りとストレート(一般の方にはそうでないかも)な短篇集。とにかく読みやすい。スラスラ読んで行き、最後の一行で「ストン」と落とされる快感。しかもほとんどが幸せな結末ではないあたりにディックらしさが漂う。やはり表題作が秀逸。2015/01/09

マリリン

26
数冊読んだフィリップ・K・ディック作品。好きな作家だが本書は今まで読んだ中で一番気に入った。短編12作品中何作か鳥が登場するのも理由の一つではあるが、安部公房の世界が脳裏をよぎる感覚も良かった。全作品幻想的な世界を楽しめたが、特に印象に残ったのは『レダと白鳥』『森の中の笛吹き』『クッキーばあさん』。お勧めとのコメントを読み手にした本だが、私もお勧めしたい一冊。2018/05/19

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