内容説明
違う時間を生きる恋人たちの心情を痛切に描いて、発表と同時にスタンダードになったと絶讃されたデビュー作「美亜へ贈る真珠」をはじめ、亡くなった男を想いつづける女心の深淵にふれる「梨湖という虚像」、夫婦のすれちがいが驚くべきできごとに発展する「玲子の箱宇宙」、時間を超越して男女が運命的なめぐりあいを果たす「時尼に関する覚え書」と、女性名をタイトルに織りこんだ、泣ける抒情ロマンスSF7篇を収録。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっちゃん
90
長男からの借り本。「まあ、読んでみてよ」と言われた【時尼に関する覚え書】から読む。もう吃驚仰天。去年読んで「ええ話だわあ…」と涙さえ浮かんだあの本とほぼ同じ展開。こちらの方は1990年の作品。これは一体…しかもこちらの方が短編なのに、さらに驚く仕掛けもあり、出来が良い。あちらの作品で舞い上がった感想をしたためてしまった自分が今さらながら、気恥ずかしい…(;>_<;)2015/09/19
佐々陽太朗(K.Tsubota)
58
初・梶尾真治です。デビュー作「美亜へ贈る真珠」が読めて幸せです。7つの短編すべてに喪失感がただよっています。切なくも美しいロマンス。SFはこれほどまでにロマンティックになれるのか。”愛”と”時間”の織りなすピュアな恋愛。”時”の制約があるからこそ、逢瀬は狂おしいまでに儚く美しい刹那となりうるのだ。「時尼に関する覚え書」がお気に入り。『ジェニーの肖像』(ロバート・ネイサン著)に対するオマージュとして書かれたのですね。恩田陸さんの『ライオン・ハート』とともに私の記憶に深く刻みました。2012/09/06
しゅわ
48
【図書館】お恥ずかしながら初読みの作家さんでしたが、“短篇の名手”として評価が高いらしく…違う時間を生きる恋人をおもうデビュー作「美亜へ贈る真珠」、亡くなった恋人への想いと執着を描く「詩帆が去る夏」「梨湖という虚像」、夫婦のすれ違いが怖い「玲子の箱宇宙」、時間を超越した遡時人(そときびと)との出会いを描く「時尼に関する覚え書」ほか…ワームホールやタイムパラドクス、ウラシマ効果などなどSF設定がポンポン出てくるけどシッカリロマンス小説…という不思議なテイストの短編7篇が収録された充実の1冊です。2015/10/14
MAEDA Toshiyuki まちかど読書会
38
図書館本。時尼に関する覚書を読みたくて借りました。ぼくは明日...はこの短編の本歌取なんですね。2016/01/29
SOHSA
36
《図書館本》主に時間をテーマにしたSF短編集。『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』からの繋がりで読了。なるほど『ぼくは明日〜』の設定は本書内『時尼に関する覚書』にあったかと確認できた。しかし、それを差引いても本書と『ぼくは明日〜』のそれぞれの持ち味、魅力は失われない。本書に収められた短編はいずれも秀逸でそのアイデアには脱帽する。荒削りな面は否めないが、かえって余分なものがなくすっきりと引き締まっている印象だ。梶尾作品は初読みであったが、インパクトのある作品ばかりだった。2020/07/11