内容説明
地球連邦軍の月面基地に所属する“雷獣”迎撃小隊、通称「脳天気小隊」が遭遇したのは、「?」や「!」や「恥ずかしいもの」に見える不審な物体だった。調査の結果それは、敵対する水星軍の平行宇宙移動探索機マーキュリーと、その意識を言語化する思考装置・迷惑一番であることが判明。だがそのあまりにも御都合主義的なプロジェクトにより、脳天気小隊の5名は平行宇宙へと飛ばされてしまう…。初期傑作、待望の復刊。
著者等紹介
神林長平[カンバヤシチョウヘイ]
1953年新潟県生まれ。1979年、第5回ハヤカワ・SFコンテスト佳作入選作「狐と踊れ」で作家デビュー。第1長篇『あなたの魂に安らぎあれ』以来、独自の世界観をもとに「言葉」「機械」などのテーマを重層的に絡みあわせた作品を多数発表、SFファンの圧倒的な支持を受けている。『敵は海賊・海賊版』、『グッドラック戦闘妖精・雪風』などの長短篇で、星雲賞を数多く受賞(以上、早川書房刊)。1995年、『言壷』で第16回日本SF大賞を受賞した
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヤギ郎
13
神林長平の初期長編作品。「脳天気」がキーワード。脳天気な物体、脳天気な言語思考装置、脳天気な隊員たち。この脳天気ばかり登場する物語の結末はいかに。ファースト・コンタクト作品の要素を織り交ぜながら、言語や自己認識を探究する、神林長平の普遍的テーマが描かれている。2019/10/21
活字スキー
10
トニたけ先生の表紙イラストに導かれ、期待と不安のブレンディッドウイングボディで宇宙の向こうまでFly away!30年前にして既にこれほどかわゆい探査機を描いていたとは……神林先生マジ予言者。クールでロジカルでメカニカル、そんでもって能天気かつ理解を超えた存在とのコミュニケーション。若かりし長平兄貴が楽しんで書いてる感がビシバシ伝わってくる良いSFでした。すなわち、うんたらかんたらであって、そもくれまひれくる2015/02/07
おぎにゃん
8
平行宇宙を渡り歩く「迷惑一番」とその本体たる「私」に巻き込まれた雷獣小隊の面々が、平行宇宙で織りなす、ドタバタ喜劇。ギャグ満載のドタバタの中に、平行宇宙とは、機会知性とはどんなものかが、分かり易く取り込まれ、ラストはそこはかとなく哀愁さえ漂う。喜劇を書きこなすのは難しい…と言われるが、さすがは神林長平さん。傑作である。2014/02/17
腰ナス
7
ドタバタでコメディ風だけど最後の力強さというか何とも言えない寂寥感が良い。主人公はいつもどおり色々考えはするけれど動く時はスパッと動くのでダレなくて良い。宇宙に浮かぶクエスチョンマークとか生の腕が字を書き残してるとかシュールの絵面をひたすら敵の攻撃だと考えるあたりのノリが好き。荒唐無稽な状況に対して敵の攻撃、と考えて対応しようとするスタイルが何だか前向きでかっこいい。会ってからはほとんど笑いっぱなしの教授の能天気さも良い2017/10/14
Hepatica nobilis
7
題名から想像するように馬鹿馬鹿しいだけではないけれど、そんなに面白いくはない。神林ファンなら楽しめるはず。ふざけていて確かに「能天気」だが、メカ、言葉へのこだわりはすでに健在。そのツギハギ感が魅力と言えなくない。2013/11/09