ハヤカワ文庫
奇術師

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  • サイズ 文庫判/ページ数 587p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784150203573
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

北イングランドに赴いたジャーナリストのアンドルーは、彼を呼び寄せた女性ケイトから思いがけない話を聞かされる。おたがいの祖先は、それぞれに“瞬間移動”を得意演目としていた、二十世紀初頭の天才奇術師。そして、生涯ライバル関係にあった二人の確執は子孫のアンドルーにまで影響を与えているというのだが…!?二人の奇術師がのこした手記によって、衝撃の事実が明らかとなる!世界幻想文学大賞受賞の幻想巨篇。

著者等紹介

プリースト,クリストファー[プリースト,クリストファー][Priest,Christopher]
1943年、イギリスのチェシャー州生まれ。1966年に短篇“The Run”でデビュー。1974年の『逆転世界』で英国SF協会賞を受賞した。1984年の『魔法』をはじめ、近年はSFと幻想小説の境界線上にある作品を発表しており、そのひとつである『奇術師』は世界幻想文学大賞を受賞(1996)している

古沢嘉通[フルサワヨシミチ]
1958年生、1982年大阪外国語大学デンマーク語科卒、英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

330
1996年度世界幻想文学大賞受賞作。ここからも分かる通り、本書は紛れもなく現代の作品である。そして、物語の主要な時間は19世紀末から20世紀初頭に置かれている。つまりSFとはいうものの、それはニコラ・テスラの「無線送電システム」に負っているのである。ことほど左様に、この小説は時間と空間のイリュージョンを錯綜させることに主眼があるかのようでもある。そして、我々読者もまた、いつしか作家の奇術の術中に嵌められてゆく。自己も、生も、生きた証も、鏡像であるのかも知れず、すべては幻の彼方に揺曳するかのごとくである。2016/05/14

ケイ

133
本当にびっくりした。双子の片割れがどこかにいる気がして育ってきた少年。彼は養子だから、まず本来の親探しから始まる。気づくと、過去の2人の天才奇術師の互いへの醜い嫉妬と争いの物語になっていて…、まさか種明かしがそういうところにくるとは思いもしなかった。紙面を通じて、奇術を見せつけられたではないか。もう一度、はじめに戻ってみる。すると、さあマジックを始めますよと奇術師がパチンと指を鳴らしてウインクしてこちらを見た気がした。2017/07/05

NAO

82
二人の奇術師の確執。瞬間移動の早さ見事さを狙っての二人の争いの裏に隠された真相。この作品には、双子について何度も言及がある。エンジャは、ボーデンの瞬間移動を双子によるトリックだと疑い、信じようとしなかった。語り手のアンドルーも、なぜか自分は一卵性双生児に違いないと信じ込んでいる。このアンドルーの「一卵性の双生児に違いない」という感覚は、最後の最後にタネ明かしされる。また、ずっと読んできたものが真実ではなかったらしいということも。解説にもあったように、この作品では、記述=奇術、なのだ。2021/03/04

Tetchy

61
19世紀末から20世紀初頭にかけて一世を風靡した二大奇術師の対決。しかしそこはプリースト、単純な話にはならず、得体のしれない双子の存在などが読者を幻惑する。さらに語り手は「わたし」に変わり、これが2人の奇術師のどちらなのか、さらには生者なのか死者なのかも不透明になっていく。この匿名性が名前の重要性を改めて知らされるが、その確定要素でさえ存在意義を揺るがす要素として扱う。とにかく理解力を試される作品だ。恐らく再読すれば違和感を覚えた記述の意味が解るだろう。しかしこれほど頭を揺さぶられる読書も久しぶりだった。2013/11/18

藤月はな(灯れ松明の火)

53
カバーイラストが七戸優氏が担当している表紙で読了。育て親に慈しまれて育つが自分には双子の兄弟がいると実感していたアンドリュー・ボーデン。そんな彼が出逢ったのはケイト・エンジャ。彼らの曾祖父は瞬間移動を目玉にして争っていたマジシャンであったという。アルフレッド・ボーデンの主観交じりで所々が自動書記によって書かれたとしか思えない手記、ルパート・エンジャの努めて客観的でありながらも自ら、欠落させた手記は「ねじの回転」のように疑いながら苛々して読みました。しかし、互いの内容を摺り合わせることで発覚した事実に慄然。2013/03/12

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