感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
80
長年の積読本消化。原書1968年のファンタジーの古典。最後のユニコーンが人間の魔法使いたちとほかのユニコーンを探し、赤い牡牛という言葉を頼りに、旅をする…… 難解。寓意が込められているのだがこちらの思いよりも他の部分を指しているようであり、ファンタジーものの物語の枠組みを意識する登場人物や語り手たちの意図、いつもの読書と違い振り回されるか唖然としてしまう。しかし、多くの象徴の重なりのせいか、ある種の感動を得てしまう。うーむ。完全版が学研からでている。2003年に発表した続編の中編小説が収録とか。良書。2018/12/11
榊原 香織
75
ファンタジー なかなか読みずらかった。 魔女のカーニヴァルの幻獣たちの中に、マンティコアがいた。先日ネズビット作品で初見。人間の頭にライオンの胴、でもかっこよくない風。 献辞のオルフォート・ダッパー博士て誰?野性のユニコーンを見たことがある人だそうで。2021/05/29
ちはや@灯れ松明の火
47
月の夜に降る雪は、触れたそばから消えてしまう淡い幻。移ろわぬ時間を生きるユニコーンと、限りある生命しか持たない人間、旅の道連れとして重なり合った時間が、何者にも汚せない魂に色彩を落とす。姿を眩ませた仲間たちを探し、慣れ親しんだ森の外へ。闇の獣を集める老婆、凍てついた心持つ王、血の如く赤い牡牛。生き延びるために姿を変えた魔法が、心までもふたつに分けた。人のかたちをした器に注がれていく、今まで知ることのなかった感情。独りきりの永遠か、共に暮らすいつか終わる道か。溶け落ちてしまいそうな淡雪が、胸の中に降り続く。2012/06/10
凛
17
非常に危うい。崖の淵を歩き続ける読書体験。ファンタジィの道具を使った形而上学的内容なので物語に没入しきることは無く自分の過去の体験や現状を顧みうぐぐと呻いていた。あまりにも綺麗。美人薄命。滅びの美学。春の夜の夢。この物語単体だけでは発動しないタイプの本。経験が破壊力を増幅させる。読みやすくも読みづらくもないキワドイ訳で、新訳ではマイルドになりすぎて(物語を追う要素が強い)狂気が薄れて残念という意見を読んだが、確かにこれは物語の詳細は二の次で断片断片が大事なんだよなぁ。というわけで新訳は読む気にはなれない。2014/05/21
傘緑
11
「ユニコーンは、たったひとりで、ライラックの森に住んでいた。…彼女はとても年をとっていた…」最後に残されたユニコーン、不死の魔法により彷徨うドジな魔法使い、まがい物の世界に絶望して死を歌い、死神を飼う年老いた魔女、貧しく荒んだ暴君。ビーグルの小説にでてくる人物は皆寂しさの影を背負っている、ただ『秘密めいた場所』のアイオワの鷗のようにそんなどうしようもない不安のなかに一抹の希望や救いを感じとれる。最後にこの物語はつづく次の物語を歌い初める、それは恋や愛の物語だったりするかもしれない、ただそれはまた別の物語2016/09/07