内容説明
ふたつの都市国家“ベジェル”と“ウル・コーマ”は、欧州において地理的にほぼ同じ位置を占めるモザイク状に組み合わさった特殊な領土を有していた。ベジェル警察のティアドール・ボルル警部補は、二国間で起こった不可解な殺人事件を追ううちに、封印された歴史に足を踏み入れていく…。ディック‐カフカ的異世界を構築し、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞をはじめ、SF/ファンタジイ主要各賞を独占した驚愕の小説。
著者等紹介
ミエヴィル,チャイナ[ミエヴィル,チャイナ][Mi´eville,China]
1972年イングランドのノリッジに生まれる。ケンブリッジ大学で社会人類学の学位を取得。ロンドン大学で国際法の博士号を取得している。98年に長篇『キング・ラット』を発表してデビュー。2000年に刊行した“バス=ラグ”シリーズ第一作『ペルディード・ストリート・ステーション』(早川書房刊)は、アーサー・C・クラーク賞、英国幻想文学賞を受賞、一躍SF/ファンタジイ界を担う存在となった。02年にはThe Scar、04年にはIron Councilと、“バス=ラグ”シリーズの長篇を発表
日暮雅通[ヒグラシマサミチ]
1954年生、青山学院大学理工学部卒、英米文芸・ノンフィクション翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
82
思想などが重なり合わない、二つの都市が地形的に重なり合った国で遺棄された女の死体が発見された。どうやら、その女は都市の秘密を探っていたというが・・・。『ぼくは怖くない』のようなテーマを持ったミステリーかと思いきや、『第三の男』のような逃亡劇、SFや英米哲学で御馴染みの瞬間移動、『1984年』のようなディストーピアと万華鏡のように変わる世界観にのめり込みました。相変わらずのリーダビリティと『言語都市』のように「初めに言葉ありき」という、言語は全ての事象に影響を及ぼす絶対性を有すものという思想も伺えます。2013/11/20
財布にジャック
74
刑事さんが主役だし殺人事件を捜査していくというミステリー仕立てな展開から始まったので、これはスラスラと読めそうだと甘く見ていました。どんどんと読んでいくうちに複雑な都市と都市の存在が頭の中でごちゃごちゃになり、想像しにくくて思いのほか読了に時間がかかりました。凄い世界観だなぁとは思いましたが、次から次へと人が死ぬのと、オチが切ないせいなのか、どうも読後感があまりよくないのが残念です。2012/09/18
のがわ
71
言語も文化も歴史も異なる中欧バルカン半島の都市国家ベジェルとウル・コーマ。主人公「私」によって語られ徐々に明らかになる二つの都市の姿は…、読者の誰もがこれまで体験したことのない世界を舞台に描かれる警察小説。「キノの旅」の舞台のようなどこか寓話チックな設定をこれだけリアリティをもって構築する筆力に恐れ入る。序盤から中盤にかけてはやや淡々と(かつ丁寧に)世界を描写するため物語的には若干ダレ気味な時もあるものの後半の怒濤の展開で一気に加速し読ませるのも見事2015/02/16
GaGa
67
同じ場所に二つの都市国家が存在すると言う設定はSFとして際立っている。解説にある通り、その都市国家がそれぞれ判りやすい形で描かれていたら、純然たるバカ作品となっていたかもしれない。ただSF色はそれだけにとどまり、やはりミステリー(あるいはハードボイルド)作品ととらえるのが妥当かと思った。そう考えると終盤は肩透かしをくらったようにも思えるが、世界観の確立(書ききったもの勝ち、みたいな)がなされているからこそ読ませるものはある。2012/01/07
催涙雨
61
造語や固有名詞の多さ(人物名もふつうじゃない)と翻訳文の堅苦しさが悪い方向に作用しあって特に序盤の読みづらさがひどい。感覚が掴めるようになってくればリーダビリティを気にすることはなくなるが、いちおうミステリのフォーマットに倣っている作品なのだから、最初に人物の一覧くらい入れてもよかったと思う。もう一度言うが本作はほとんどミステリの領分にある作品なのだ。SF的要素は都市の構造に限られている。その都市の構造に関しても、二都市の成り立ちやブリーチが必要になった理由、それら全体の変遷などは基本的に語られることがな2019/04/07