内容説明
漆黒の宇宙空間に浮かぶ地球サイズの巨大な風船を思い描いてほしい。その内部では百を超えるミニ太陽が輝き、雲や水や植林されたアステロイドが漂う。当然のことながらそこに重力はない。人々は、自らの領土に光をもらすミニ太陽のそばに、町を築いて生活していた…驚くべき科学技術によって建造された、ヴェガ星系の外縁軌道上にある驚異の人工世界ヴァーガを舞台に、復讐に燃えるひとりの青年の波瀾万丈の冒険物語。
著者等紹介
シュレイダー,カール[シュレイダー,カール][Schroeder,Karl]
1962年カナダのマニトバ州ブランドンの生まれ。現在はトロントで妻と娘一人と暮らし、作家業と技術コンサルタント業を半々でこなしている。1990年代から本格的にSF短篇を書き始め、2000年Ventusで長篇デビュー。2作目のPermanenceが、カナダのSF、ファンタジイ作品に贈られるオーロラ賞を受賞
中原尚哉[ナカハラナオヤ]
1964年生、1987年東京都立大学人文学部英米文学科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
65
ミニ太陽に沿って街を形成しているヴァーガ。しかし、重力は富裕層がコントロールしている為、熱や光は通らない上、個人が独自のミニ太陽を所有する事が禁じられている。それによってできた格差社会で復讐を目論むヘイデン。しかし、タイミングを逃したりとウッカリで行き当たりばったりな所が多い彼は仇と過ごす内に己の恩讐も変化していく。そして突如、明らかになるヴァーガの外側の真実。まだまだ、謎が多いのに邦訳はこの巻だけって…orz2020/07/08
すけきよ
5
BGMは久石譲(笑)何よりもヴィジュアルが素晴らしい。無重力のため、町も、森も、海も全てが浮かんでいる。雲を壁にした艦隊戦なんて、完全に脳内変換されてますよ。ただ、物語がちょっといびつ。イマイチ焦点が絞れない様子で、思いついたエピソードを無理矢理一冊に接着した感じ。それと同時に、ヘイデンの過去、レジスタンスなど、中途半端な描写が多々。あと、一番気になったのが、けっこう簡単に人を殺す理由にあまり説得力がない。この設定なら、もっとスカッとした物語にして欲しかったなぁ。2008/12/01
ニミッツクラス
4
08年の本体840円の初版。気球世界ヴァーガを舞台とするポリロジーで、本国では12年に5作目が出ているが、邦訳は本書だけのようだ。本書は13年頃にブコフで100円で買い、続巻も出ない色物作品なのか?と積読だった。今回読んでみて、良く書き込まれた力作だと感心した。ヴァーガ世界の成立そのものは続編に託す不明な部分もあるが、主要キャラ、気球内部での生活や戦闘をスチームパンク的に巧みに描写して、物語としても一応の完結をみている。長編の雰囲気に対して、短編の筆致はどうなのか、とても気になる作家である。★★★★☆☆2016/07/17
可兒
4
確かにリングワールド以来の奇想天外世界。三部作になるのもうなずけるしそうなるのは嬉しいが、できればアウトサイダー抜きでやってほしかった。反則に思える2008/12/30
レイス
3
惑星サイズの空気のある無重量世界。しっかりしたsfで面白かった。上下左右が頭の中で描くのが難しかったけど、物語が単純で助かった。チェイソンの「頭痛の種」は名セリフ賞。太陽の大きさや作りが気になる。中心からヴァーガの殻まで光は届かないものなのかな。地球の大気圏の厚さと比較したくてもそこが分からず、sf的にもやもやうずうず。ああ、バイクではなく、足ひれをつけて空を泳いでみたいなぁ。続編読みたし!2017/03/12