内容説明
赤道上の同期衛星から超繊維でできたケーブルを地上におろし、地球と宇宙空間を結ぶエレベーターを建造できないだろうか?全長四万キロの“宇宙エレベーター”建設を実現しようと、地球建設公社の技術部長モーガンは、赤道上の美しい島国タプロバニーへやってきた。だが、建設予定地の霊山スリカンダの山頂には三千年もの歴史をもつ寺院が建っていたのだ…みずからの夢の実現をめざす科学者の奮闘を描く巨匠の代表作。
著者等紹介
山高昭[ヤマタカアキラ]
1927年生、1992年没、1952年東京大学理学部化学科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MICK KICHI
78
100分de名著 クラークのシリーズ最後に取り上げた作品。宇宙軌道エレベーターの建設に後半生を捧げた技術者への賛歌。ヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞。誉れ高き名作、面白く無いはずがない....。なんだが、徹頭徹尾作品世界に入り込めず、かなりシンドかった。クラーク作品に顕著な心理描写の薄さ、細か過ぎる章だてによる散漫さが要因かと思われるが、特に冒頭から語られる古代信仰ガジェットに違和感があり過ぎ、重要なプロットでラストへの布石ではあるが、上手く機能していない..、色々あっても最後は絶賛の嵐に期待したが... 2020/04/15
かえで
40
SF三大作家の1人、アーサー・C・クラークの代表作。「宇宙(または軌道)エレベーター」を作ることに一生を捧げたモーガンという技術師の話。地球から宇宙へ伸びるエレベーター、おそらく誰しも耳にしたり、描いたりしたことのあるものではないかと思います。それを題材にしたもっとも有名な作品。作品に盛り込まれた科学知識はさすがの量と濃さを持っており、全てを理解したとは言い難いですが、非常に感心させられた。宇宙エレベーターを作る男の純粋な1つのストーリーとしても楽しむことができる。宇宙エレベーター、実現するといいな。2015/04/27
Small World
34
クラークの描くSFは、まだ見ぬ風景を感じることができて、これぞSF!って気持ちにさせてくれるのが楽しいです。軌道エレベーター建設の物語ですが、登場するスターグライダーはラーマのように、スターホルムはオーバーロードのように、そして、スパイダーで塔を旅する姿はスターゲートのようにと......正にクラークの集大成と感じる作品でした。(Wクラウン作品)2018/09/26
ニミッツクラス
33
06年(平成18年)の税抜860円の青背新版初版。版を重ねて今はトールサイズ版かな。80年に単行本、87年に青背旧版(SF731番)で出た。自分は80年からのSFM連載分をリアルで読んでいたよ…眉村卓の司政官シリーズの準長編「長い暁」と同時開始だった…懐かし~。シェフィ-ルドの「星ぼしに架ける橋」と同時期にネタが被って話題を醸し、結果軌道EV物の双璧を成した。「星ぼし…」の方は地球側のアンカー設置方法が後半のヤマだが、クラークは安定の知見と小ネタの詰込み過多と驚天動地の異星人ネタでWクラウン。★★★★☆☆2024/04/02
ぐうぐう
33
冒頭にジャワハラール・ネールの「政治と宗教は過去のものになりました。科学と精神の時代が来たのです」という言葉が紹介されているが、『楽園の泉』はまさしく「政治と宗教」から「科学と精神」の時代へと変わる物語だ。そこで象徴的なツールとして配置されているのが、宇宙エレベーターである。今世紀に入って俄然、技術的現実味を帯びてきた宇宙(軌道)エレベーターだが、現在から40年以上も前に書かれた小説で取り上げ、未来を予想したクラークは凄いと思い込むのは、いささか早とちりかもしれない。(つづく)2020/03/13