内容説明
すべての生産手段が完璧に自動化され、すべての人間の運命がパンチ・カードによって決定される世界…ピアニストの指を拒絶し、あくことなく自動演奏をつづけるプレイヤー・ピアノの世界を描く本書は、『1984年』と『不思議の国のアリス』とのはざまの不可思議な文学空間を生みだした。アメリカ文学の巨匠として熱狂的な支持を受けているヴォネガットが、現代文明の行方をブラックな笑いのうちにつづった傑作処女長篇。
著者等紹介
浅倉久志[アサクラヒサシ]
1930年生、1950年大阪外国語大学卒、英米文学翻訳家
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感想・レビュー
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sin
83
人間はより良い物や、制度を創ろうとするが…しかし、その人やその一部の人達によって良いとされるものが全ての人々に受け入れられるわけではない。この物語は社会に依存する性質と、個性を誇示する性格の、その両極端とも言える内面を有する人間の物語として(いささかメッセージ性はくどいが)秀逸だが、この主人公の受難を見る限り人間にとって必要なものは柔軟性とそれを許容する社会ではないかと思えて来る。2017/11/28
Vakira
54
♪本当の一時、本当の人生、生きている心。自然に帰れと誰かがよんでる。そうさコカコーラ。この広い空の下生まれてきてよかった~♪そうさ 人間は人間さコカコーラ~♪っと 遥か懐かしいCMを口ずさんでしまう。そんな物語。自動でピアノが音を奏でる自動演奏ピアノ。今から70年前の1952年の作品。ヴォネガットさんが想像した未来は、人間に代わって機械が支配する世界ではない。IQの高い博士達がこの世を牛耳る。肉体労働は機械へ。匠の技だって機械でOK。肉体労働者、技を持った技能者たちの仕事は無くなっていく世界。2021/09/20
NAO
52
IQによる階級差別がまかり通っている社会。機械以下と判断され者たちは、屑のように扱われている。相手が機械であるだけに、その階級制は非人間的で手厳しい。そして、支配階級に属する者たちは、自分がその階級にしがみつくことだけに汲々としている。ヴォネガットは、するべきことを機械に奪われはじき出されていく人間たちの社会を「プレイヤー・ピアノ」という言葉で象徴的に表したが、自動ピアノの味気ない演奏も、まさにこの社会そのもの。この社会に虚しさを感じてしまったフィナティーがピアノをたたき続ける姿が、なんとも痛々しい。2015/11/15
あふもん
42
割とシンプル。ちょと飛ばし飛ばし読んでしまったが、最後のメッセージは伝わった。もちろんこの人独特のキラキラした文章もちらほら2016/01/16
魚京童!
39
すげー良かった。たぶんこの世界はこんな風に向かっていく。だからトランプが大統領になったのだと思う。世界は変わることを望んでいる!オバマのようなCHANGE!ではなくトランプが行うCHANGEを望んでいるのだ。前読んだの違ってゴミのような人間はゴミ溜めにいた。クスリで頭が飛んでいるのと変わらない気がする。そして悩むのは賢い人間だ。私は賢い人間になりたいし、悩んですべてを壊してみたい。でもきっとゴミ溜めか薬中になるんだろう。それが悲しい。生き甲斐ってやつを見つけないとな。機械にすべてを持ってかれてしまう。2016/11/13