ハヤカワ文庫<br> 山椒魚戦争

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ハヤカワ文庫
山椒魚戦争

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  • サイズ 文庫判/ページ数 502p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784150112523
  • NDC分類 989.53
  • Cコード C0197

内容説明

赤道直下の島の入江には黒々とした不思議な生物が棲んでいた。現地では山椒魚に似た姿から、魔物と怖れられていたかれらだったが、じつは高い知能をそなえていたのだ。自然の中で生きる無垢な山椒魚が現代文明と出会ったとき、その内面に生じた重大な変化とは?チェコが生んだ偉大な文学者カレル・チャペックが、人間社会と山椒魚の出会いを通じて人類の本質的な愚かさを鋭く描き、現代SFの礎となった名作。改訳決定版。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

向う岸

9
☆3 1935年の作品。赤道直下の島で見つかった知性ある山椒魚たち。人間は従順な山椒魚たちをかつての黒人奴隷のように労働力として世界各地に広げていく。最初は使役させているつもりだった山椒魚がどんどん数を増やし、遂には生物界の覇者となる。人間が高度なテクノロジーを制御していると思っていたのに、依存し過ぎてしまうあまり、そのテクノロジーなしでは立ち行かず主従が逆転してしまうというのはどうしても原発を連想させる。ロボットやドローン、人工知能は果たしてどうなるのやら。現代にも通じる普遍的なテーマだ。 2015/06/01

kengzilla

6
冒頭からとにかく語り口がコミカルで楽しい。今より安い労働力(山椒魚)が手に入るなら、各国がその労働力をより多く確保しようとして様々な策を労するのは当然。本作が素晴らしいのは、その労働力を確保するために各国を安易に戦争という手段に走らせなかったことじゃないだろうか。植民地時代ならともかく、現代ならば戦争ではなくこういう妙な外交戦になるだろうし、実際そうなってる。作中、山椒魚達が団結して反旗を翻すようになるのは、妙な指導者が出てくるからだ。これも納得。チャペックさん凄すぎ…傑作だ。2009/07/15

rincororin09

4
再読。ずいぶん昔に読んで内容は忘れてしまっていた。その時代背景を抜きに考えても、一流の風刺文学で一流のSFだと思う。人間が手をかけて育てたものが不気味に増殖していって人間に災いをもたらす…っていうふうにストーリーを大きくとらえると、今もてはやされている「AI」なんかのパロディーにもなるかも。2020/02/28

シャル

4
新種の山椒魚を労働力とし、発展させ、やがてその山椒魚に取って代わられるという人類の典型的な滅亡への道を描いた古典的傑作。人類同士の戦争ではなく、無責任な発展主義によって歯止めが利かなくなり、破滅へと進んでいく様は、今なお強烈な文明風刺として刺激的な物語である。現代にこの山椒魚が現れても、同じことになるかもしれない……2010/06/08

yukinden

3
手塚治虫から山椒魚戦争へとやって来ました。『人間ども集まれ!』は、‘Xは警告する’の章だけではなくて、全体からインスパイアされてできた作品だったのですね。訳が非常に読みやすくて、まるで童話か何かを読んでいるかのような語り口。 かといって、テーマが軽いものだと言っているのではありません。むしろ、シリアスです…それもきわめて。 作家は時代とコミットした作品を書くべきだ、という考え方もあると思いますが、この時代、そしてその時代の特定の場所に生まれた場合というのは、必然的なものがあったのでしょう(オーウェル然り)2011/11/12

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