内容説明
最終戦争ですべてが崩壊し、廃墟となったアメリカで、人々は小さな集落をきずき、やっと生きのびていた。ゴードンは、そんな世界をひとりで生き抜いてきた男だった。だが、山中に遺棄された郵便配達のジープを発見したとき、彼の運命は大きく変わった。郵便配達の制服を着たゴードンは、アメリカ再建をめざし、孤立無援の戦いに挑むが…キャンベル記念賞、ローカス賞受賞、ケビン・コスナー監督・主演で映画化の話題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ざるこ
46
終末戦争後のオレゴン州。放射能、疫病。生き残っても必ず現れる残虐な略奪者たち。こんな文明社会崩壊の物語はいくつか読んだけど…飽きないなぁ。ゴードンは屈強でも特に賢いわけでもないけど復興に尽力したい気持ちはずっと心にあるよう。こんな無法世界では戦前の郵便配達という日常の1コマが強烈に郷愁を誘うという心理に納得。点在するコミュニティを訪れ自身の嘘に苦悩しながらも人々の心を動かしていくゴードン。男たちに残る戦前の科学技術、女性たちの悲しき蜂起。ラスト少しの希望は湧くものの破壊され尽くした地を思うとやるせない…。2020/05/17
鐵太郎
22
ケビン・コスナー主演の映画は観たはずだけど覚えてません。ただこの小説は鮮烈に覚えています。1990年代の核によるホロコーストのあと、ようやく生き延びていた人類世界で、生き残った一人の男が郵便局員になりすまして食を得ようと小さな町を訪ねます。そこで付いたささやかな嘘が、人々の希望になり、この荒廃した世界の中でいつの間にか彼を主役に押し上げることに。「黙示録3174年」と比較されることも多いそうですが、あれとは違う別な世界の甦生の物語。ブリンの本をもっと読み返してみようかな。2019/09/22
ねりわさび
16
第1部しか映像化されなかったSF映画の原作。復興合衆国という虚構に依存しながらも懸命に命を紡いでいく生存者たちの思いがしっかりと描かれている。後半で明かされる女性たちの活躍は、たとえ戦術的に失敗であったとしても前向きであり、琴線に触れるものでした。2018/08/13
よこ見
9
文明崩壊後のアメリカで郵便配達員を名乗り始めた男と、彼に復興の夢を託した人々の物語。アナログだが広域ネットワークの一つである郵便制度を文明の象徴に据える発想がニクい。旅先で警戒されないための嘘が思わぬ展開を見せたことに戸惑いつつも自分の発言に責任を持とうとする主人公には好感が持てるし、類まれな力を私欲のためにふるうマクリン准将と「シュガーローフ山の主」パウハタンの対比なども見るに、「責任」という言葉がこの作品のテーマのように思える。2020/06/17
duzzmundo
9
どこか西部劇を思わせる終末世界で郵便を運ぶことになるポストマン。荒廃した大地と郵便って、なんで人を惹きつけるのだろうかと思ってみたり。後半はしっかりSFになっており、なかなかおもしろかった。映画版は前半部だけらしいけど、そのうちみて見ようかと。2019/08/25