内容説明
医学博士のホブスンは、死にかけた老女の脳波の測定中に、人間の「魂」とおぼしき小さな電気フィールドが脳から抜け出てゆくのを発見した。魂の正体を探りたいホブスンは自分の脳をスキャンし、自らの精神の複製を三通り、コンピュータの中に作りだした。ところが現実に、この三つの複製のうちどれかの仕業としか思えない殺人が次々に…果たして犯人はどの「ホブスン」なのか?1995年度ネビュラ賞に輝く衝撃の話題作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
316
ソウヤーは初読。本書は一見したところでは、地味なSFに見えるかもしれない。何故なら、ここには物理的な意味においての壮大な宇宙空間も、また眼を見張る航法やテクノロジーが語られているわけでもないからだ。その一方、この作品は電子空間にはいわば無限に開かれており、それが実に緻密な筆致で語られている。ここで問われているのは、生命の本質であり、それは魂の実在といった問いをも内包している。そうした重いテーマでありながら、物語は疾走するように展開してゆくのであり、第1級のエンターテインメント性をも兼ね備えている。2018/03/23
催涙雨
56
魂の存在が観測されたことで“死後の生”的なものが判明、また同時期に人間に不死性を与えることが可能になった、という近未来世界の話。この死後の魂の活動と不死が対立軸のひとつだろう。これを比較させるモチーフとしてそれぞれの形質をもった精神のコピーを電子空間に作成したところから物語は動き始める。しかしミステリのような趣向が強まるストーリーラインのなかで、このふたつの対比はあまり明確な形をとってくれない。それどころか、まったくべつの対比がしだいに見えはじめてくる。それは肉体の有無。唯心唯物の対立に近い。この対比の優2019/01/17
GaGa
51
ソウヤー三冊目。これも面白かった。今のところ私の中でこの作家はまるではずれがない。凄い。AIの反乱というのはテーマとしては今読むには少し古いのかも知れないが、話の運びが上手いので飽きることなくページをめくってしまう。エピローグの最後の二行が非常に心に沁みた。2012/05/09
カザリ
40
リアルさを感じるSFガジェットは時代のテクノロジーを連動している。人格スキャンとか記憶のコピーは、実は随分前から無理なんじゃないかと思っていて、(脳の可塑性とか肉体に蓄積された記憶と連動しているから)そう思ってしまうと、とたんに色あせてしまうネタだなあと思う。人格コピーできたら楽しいと思うけれど、一方で生物を馬鹿にしているようにも思ってしまうんだよなあ。2018/02/18
miroku
30
魂の存在と言う問題はおかずのようなもので、AIの殺人を巡るミステリがご飯。でも美味しかった♪2018/04/19