内容説明
粒子加速研究所の大惨事が、地球を壊滅させ、ひとりの男を時間の乱流へと押し流した。だが男の意志は強かった。彼はおのれの足で失われた“故郷”へと歩いて帰るべく、遙かなる旅に出立したのだ―。「故郷へ歩いた男」ほか、ティプトリーの華麗なるキャリアの出発点である「セールスマンの誕生」、最高傑作と名高い「そして目覚めると、わたしはこの肌寒い丘にいた」など、全15篇を収録するSFファン待望の第一短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
宇宙猫
16
★★★★★
やすお
13
初期の作品を収めた短編集。最近、分かりやすいSF作品しか読んでいないせいか、とても難解だった。物語の背景というか、その世界に浸りたいのだが、拒まれているかのような感じがした。ジュンク堂にて復刻されたときに購入して今まで積読だったのを読んだのですが、まだまだ私は未熟者だったようです。数年後に読み返したら印象は変わるのだろうか、それとも私との相性が悪いだけなのか。読んだ印象は悪くないので、私の読解力を鍛えるしかないか。2024/03/18
亮人
13
ティプトリー作品は数冊しか読んでないけど、なんか小難しくて結局頭に残ってるのって「たったひとつの冴えたやりかた」だけだった。しかし本書で見識を改めた。殊に「ビームしておくれ、ふるさとへ」。これは記憶に残る名品だと思う。2009/05/06
ふりや
12
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの第一短編集。伊藤典夫訳の乾いた文体で淡々と繰り広げられるSF世界は読んでいて気持ちよく、クセになります。内容はバラエティに富んでいますが、中には物語の意図を理解するのがかなり難しい作品もあったりして、なかなか一筋縄ではいかない作品集でもあります。印象に残ったのは時間SFの傑作と言える『故郷へ歩いた男』宇宙への憧れを描いた切ない『ビームしておくれ、ふるさとへ』ドタバタコメディ風の連作『愛しのママよ帰れ』『ピューパはなんでも知っている』など、読み応えのある一冊でした。2019/12/05
さな
12
表題作をどうしても読みたくて購入。「故郷へ歩いた男」がとにかく素晴らしい。孤独と狂気、故郷へと戻りたいという渇望が文章から滲み出てくるよう。しかしながら、その他の短編は正直読むのが苦痛だった。世界観や設定がよく分からないうちにストーリーが進むので、目が滑って読みづらい。「ハドソン・ベイ毛布よ永遠に」は好き。可愛いヒロインと奇抜な展開がよかった。ティプトリーのタイムトラベル物はバッドエンドが多い気がする。最後の一行が本当に悲しくなる。たまに自分の心に引っかかる短編があるので、ティプトリーは大好き。2019/04/19