内容説明
1962年、カリフォルニアは平和だった。抜けるような青空の下、道には椰子の木が立ち並び、ラジオからはビーチ・ボーイズの曲が流れる。海の向こうで激化するヴェトナム戦争も知らぬげに、波打ちぎわでは若者がサーフィンに興じている。だが、カリフォルニア大学の物理学者ゴードン・バーンスタインは、核磁気共鳴実験に混入する雑音に悩まされていた。もちろん、それがゴードンの人生を、さらには世界の運命までも一変させる鍵であるとは知るはずもなかった。…ついに雑音の謎を解明したゴードンを待つ驚くべき真実とは?科学者作家が迫真の筆致で描きだす傑作ハードSF。ネビュラ賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スターライト
8
1998年、地球各地で発生した環境問題などの深刻な危機を回避すべく、1962年の過去に向かって光より速いタキオン粒子で通信を試みるレンフリュー。それを”受信”したものの解読は困難を極め、のみならず雑音として無視するよう警告するレイキン。当然、レンフリューの目論見が功を奏すればパラドックスが生じるが、時間のループという手法で見事に物語を両立させる科学者作家のベンフォードにはうなった。期待したハッピーエンドにはならないものの、科学者の日常を私生活を含めて赤裸々に描写したベンフォード作品には味わいを感じた。2023/04/10
pito
2
科学者の描写に力を入れた。ということらしいけど、外国のアカデミズム自体よくわからないし、メインのアイデアの部分ももう一つかな。ちょっと長いしね。2012/02/05
古家深一郎
2
90年代の現代パートと60年代の過去パートが織り成すストーリー。現代パートの終末感と過去パートでの科学者の苦悩が主題だと分かったのが、実は物語りも終盤になってから、今思い返すと序盤の荒廃した、物資の少ないイギリスは改変された? 未来だったんですね・・・・・・ 本国の人なら一読して分かったのかな・・・・・ とにかく、核になる部分のみを取り出せば、なるほどノスタルジックと科学者の人間らしさと異常さを切り出した良い作品でしたが、ちょっと冗長に、人間描写に無駄に時間かけすぎだった気がします。これがはんぶんだったら2010/01/31
sibafu
1
時間風景(タイムスケープ)。「未来から来た手紙」というテーマは魅力的だ。でも、この物語、特に下巻はあまりにも退屈で結末も判然としなくて、娯楽としてのSF小説としては面白みに欠けて残念だった。あまりにもハードで現実味にこだわったことと、科学者たちの日常風景が多すぎるせいだろう。とはいえ、終幕でのゴードンの「時間はここであり(中略)一つのものなのだと感じた」という意識は、何か心に迫るものがあった。未来からの手紙を描いた物語だけれど、そのコアさ、ハードさからこの本はあまり遠い未来へは届きそうにない。2013/05/14
Scorpio_type_B
1
単純なハードSFだとばかり思っていたが、想像していたストーリーとは違い、これはこれでいいのではないかと思う。2010/04/07