内容説明
すべては1984年に始まった。ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』が発表され、英米SF界に〈サイバーパンク〉の嵐が吹き荒れはじめたのだ。テクノロジーとメディアの驚異的な発展が、人間そのものを変化させてゆくという認識のもと、才能ある若手作家たちがぞくぞくとサイバーパンク運動へと参加してゆく。運動の輪はSF界以外にも広がり、今もなおホットな議論をまきおこしている。そして今、現在進行形のこのSF革命の最前線から、1冊のレポートが届けられた。ギブスン、スターリング、ベア、ラッカーらの傑作を結集したサイバーパンク・ショーケース登場。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
月世界旅行したい
13
昔読んだ。やっぱギブスンとスターリングが好きなのだが今回はスターリングは控えめ。でも「赤い星、冬の軌道」のラストはスターリングらしさが強いか。まぁ今回は編集の立場だからね。2014/12/16
maja
12
スターリング編集の短編集。マーク・レイドロー「ガキはわかっちゃいない」の「月」と「鉄塔」でバラバラになったパズルが合わさっていくように情景を思い出す、再読だ。新たな気持ちで楽しんだ。AKIRAの鉄雄たちが被ってくる。あとがきにレトロっぽいキッチュな趣味があるようだとされるポール・ディ=フィリッポ「ストーン万歳」私はここのところこの味が好みなのだ。からりとした情景が残るギブソン「ガーンズバック連続体」。やはり独特な光り方をするスターリング&ギブソン「赤い星、冬の軌道」 2018/08/22
unknown
11
「ガーンズバック連続体」「赤い星、冬の軌道」は別格として、収録作の中では、ハイテク近未来の猥雑で鮮烈なロック・シーンを描く「ロック・オン」、超能力持ちのストリートギャングと、街を跋扈する管理ロボットとの抗争を抜群の疾走感で見せる「ガキはわかっちゃいない」(『AKIRA』(82年~)とかなりヴィジュアル・イメージが重なるのが面白い)、新旧の時代性がミックスされた、優雅でカオティックなドタバタ・ムードが楽しい「ミラーグラスのモーツァルト」(どこか、高野史緒『ムジカ・マキーナ』の源流にも思える)の三編が好き。2012/11/16
王天上
5
一口にサイバーパンクといってもいろいろと多彩ですね。風俗面だけが目新しかっただろう作品はやはりちょっときつい。結局ギブソン一人勝ちか?2017/05/10
TCrb
5
序文&「ガーンズバック連続体」のコンボの凄さは当然として、自分が好きなのは「夏至祭」と「ストーン万歳」。それぞれ、ドラッグとサイボーグ、つまり生体内部からと生体外部(機械)による一般人の生活と意識の変化を描いている。(「夏至祭」でも強調されている)アートとしての側面についてもそれぞれの作家が考えを投影していることは、例えばロックミュージックを主題としたいくつかの作品に顕著であるが、このことからも「運動としてのサイバーパンク」の姿勢が伝わる。電脳にダイブしてハックする系の類型はひとつもない。2012/11/06