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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アプネア
11
SFと銘打ってますがどちらかと言えば、ファンタジーよりなのかな?どうも作者は寄宿学校を描くのが好きみたいで、歌手養成所であるソングハウスでの生活は「エンダ―のゲーム」に繋がるものがあります。また、選ばれし人の苦悩といった点でも、主人公アンセットはエンダ―と同様に一種の天才なんです。物語はアンセットを中心に、人間関係の愛憎の機微を淡々と描きます。(同性愛などある種セクシャリティな表現も多々)稀有な才能を持つ歌い手が艱難辛苦を乗り越え、愛の歌を紡ぐことで得た感情や魂を最後には昇華する。美しい物語です。お薦め。2016/12/12
ryuetto
11
再読です。26年ぶりに読んだが、未だに色あせない名作。年月を経た分だけ、アンセットの哀しみや苦しみが伝わるようになって、昔よりもさらに泣けたかも知れない。「わたしはあなたをきずつけません いつもあなたをたすけましょう おなかがすいたときには どうぞわたしの食べものを くらくて怖いときには わたしがあなたのともだち わたしはあなたを愛しています とわの愛をあなたへ」 物語中、何度か繰り返されたこのフレーズにどうしても泣かされる。カードの作品は、いつも優しかった。厳しいのに、どこか暖かいのだ。2013/11/16
更紗姫
9
音楽は独占するものじゃない、分かち合ってこそ、価値がある。かつて『無伴奏ソナタ』の「純粋培養芸術」は〈リスナー〉だけが聴ける特権階級のご褒美で、私にはひどく不満だった。この『ソングバード』は、やはりある種のステイタスだが、その歌声は広く一般の人々も享受できる。最終章、アンセットの人生の苦渋が、歌を通じて、ソングハウスの面々に伝播する。感動や経験を声が伝え、自身に取り込み「歌い返す」 歌による魂の結びつき、1ランク上のコミュニケーションが成立している。素晴らしい。 2014/01/28
shou
7
人の声に感情を読み取り、歌い返し、心を揺さぶり説得さえしてしまう少年歌手。でもその声はやがて失われる。音楽の魅力、歌声の力を描き、重い感動のある物語。後半になって見えてくる音楽の代償というソングハウスの別の面、落ちこぼれたキャレンの人生や、老いたアンセットの苦渋を描いた終盤が素晴らしい作品。2015/04/11
おだまん
6
無伴奏ソナタに続いて。音楽というものを引き続いて考えさせられる。それはそれぞれの心にあってどう感じてもいいと思う。この物語がカードの描く音楽のカタチを表している。2014/10/24