感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
田蛙澄
1
SF版ほら男爵というべき泰平ヨンの冒険譚。短編集で、初めの方の旅は相対性理論などを利用したドタバタ喜劇ものなのだが、途中から色合いが変わり単なる喜劇ではなく風刺が入ってくる。しかもそれが医学、理論生物学だけではなく哲学も学んだ著者らしいもので、神学的な議論をするロボットや異星へ伝道する宣教師の苦悩、あるいは人体改造によって奇形化する異星人における思想の変遷などといったテーマを含んでいる。基本的なモチーフとしてはソラリスと同じく、異なる文化的な知性体との交流というのが多かった。ユーモアに溢れる快作だと思う。2015/06/30